思わず「クリックしたくなる」タイトルの誘惑 テキスト、動画…〝炎上〟狙いも横行、良いコンテンツとは?
過激な情報発信をしないために
水野:クリックしたくなるような見出しをつけたくなる誘惑にかられることは私にもあって、立ち止まるようにしているんですが、お二人にはコンテンツに関わる上で、過激にならないように気をつけていることってありますか? 足立:何を大切にするかと考えるときに、「攻める」とか「刺さる」方向性に走らないというのはもっとも自戒していることです。だから、私は「守ろうよ」って言うんです。 「守る」というのは、普通のイメージだと、特に新しいウェブの世界ではあまりいい言葉ではありませんよね。「守りに入ったな」みたいな。 でも、「自分を守る」んじゃなくて、「ブランドを守る」こともあるし、「世の中を守る」、例えば苦しんでいる人とか、まだ日の当たっていない問題とか、いろんなことを含めて「生活を守る」ということを考えましょう、と。 この守るということからスタートした上で、「もっとコンテンツを見てもらえるにはどうすればいいだろう」と考えるようにしています。 水野:足立さんはNHKのファクトチェックにも関わっていて、フェイクニュースに対して「これはこういうことですよ」と正しく解説するコンテンツも手がけていますよね。 でも、どれだけファクトチェックをしても、フェイクニュースの方が広がってしまうじゃないですか。そこもやっぱり「守る」思いでやっていらっしゃるんですか? 足立:そうですね。フェイクの方が情報が広がるのは当たり前だと思っています。それでも「違いますよ」と誰かが指摘したものが残っていないといけません。それをできるだけ早くすることによって、リファレンスのような形で残すことには意味があると思います。 水野:徳力さんは日々、発信している内容や伝え方が非常に穏やかですよね。 徳力:私はズルいんですよね。私はあくまで会社員で、ブログやnoteは趣味なので、読まれなくても困らないんですよ。これはメディアが本業の人間だとすれば、読まれなかったら今月の収入がぜんぜん入らないわけですから参考にならないですよね。 ただ、5年前にnoteに入ってみて強く思ったのは、やっぱり人間は、人間とつながりたいんだということです。noteの中では、メディア視点で見ると、意外なテーマの個人のメンバーシップが成立していたりするんですよね。 特に象徴的なのは、元日経新聞の後藤達也さんが経済情報を配信するメンバーシップが半年で2万人を突破したケースだと思います。 ただ、これは個人が運営するメディアとしては大きな収益なんですけど、企業のメディアとしては十分な規模ではないんですよね。 でも、私はそこにヒントがあると思っていて。メディアの雰囲気や、もっと言えばタイトルのつけ方などからにじむ倫理観が好きな人たちが、広告依存モデルだけだと直接応援できないけど、課金とか直接的に応援する方法があったら、質を維持しようとしているメディアの収入も増えるんじゃないかな、と。 サブスクもそうですけど、グッズだったり、こういうイベントをどんどん開催してスポンサーについてもらったりして……というように、です。