思わず「クリックしたくなる」タイトルの誘惑 テキスト、動画…〝炎上〟狙いも横行、良いコンテンツとは?
なぜ他媒体にも越境をするのか
水野:withnewsはテキスト中心のメディアなので、もっと動画での発信もやっていきたいという思いがあるのですが、ちゃんと手をつけられていなくて……。 徳力:NHKさんにnoteを使って「取材ノート」を書いていただいたんですが、私、最初はNHKさんってやっぱり映像だし、「あんなに地上波放送でみんなに見てもらえるんだから、テキストなんてやらなくていいんじゃないか」と思ってた側なんです(笑)。 でも、震災をテーマにした記事とか、めちゃめちゃ良かったんですよね。やっぱりNHKの中の方々と話すと、「放送だと流せるところがないんだ」みたいにおっしゃる内容もあるみたいで。 そっか、NHKさんって巨大で悩みなんかないと思ってたけど、映像だけだと実は取材したのに使えていないコンテンツがたくさんあって、その中にはテキストの方が相性がいいものもあるんだ、という。 逆に言うと、withnewsさんとか、それを運営している新聞社も同じで、記者の人がたくさん現場に行って、テキストのために取材しているんだろうけれども、実はその時に撮っておいた動画が、読者やファンの人からすると「そっちも見たかった」というものがあるかもしれないと思うんです。 こういうことを言うと、「いやいや我々は動画は素人なので……」みたいな反応になるんですけど、今はそんな素人がスマホで撮った動画をテレビ局が投稿を募って「面白い投稿動画番組」で盛り上がってるんですから、そこは絶対に組み合わせた方がいいと思うんです。 足立:取材者がその取材の内幕や思いをテキストなどのコンテンツにするという、まさにnoteさんで始めた「取材ノート」でしていたことは、世界的にトレンドなんですよね。“behind the curtain”と英語では言うようですけれど。 これって、何のためにやるのかというと、メディアの信頼性を高めるためなんですよね。もう「BBCがやっている」「ニューヨークタイムズがやっている」という看板、ブランドだけで信じてもらう時代ではなくなっていますから。 私たちはこんな手法で、時には汗や涙を流し、こんな思いで取材しています、と。その内幕を見せることによって、信頼度を高めて、「より良く見てもらう」ということにつながっていくんですけれども。 特にマスコミではまだまだ、この「より良く」というところに課題があるなと思います。もちろん他のメディアさんでもそうかもしれませんが、「見てもらう」のは当たり前ですけれども、それを意識しすぎて、結果として信頼を損ねてしまうようなネガティブなタイトルや切り口という問題がまだまだ繰り返されている。 徳力さんがおっしゃるように、やっぱりメディアのファンを増やさないといけない。例えばメディアのロゴのシールを作って、もらった人がパソコンなどに貼る、といった文化もありますよね。媒体として愛されることを目指すのは大事だと思います。