市川海老蔵さんが記者会見(全文)五輪・パラ期間中に海外客向け公演を企画中
アーティストの人生が会社の所有物とみなされる傾向をどう思うか
司会:エンターテインメントの業界の中で、例えば違う分野などで、例えばアーティスト、特に若いアーティストなど、人生そのものが会社の所有物であるというような傾向が批判されることがあります。歌舞伎も外から見た者として、そういうような批判もされることも場合にはあります。そして以前にも海老蔵さんご自身も、歌舞伎のそういった傾向について批判的な発言をされたことが過去にはあるというふうに認識をしていますので、もしそれについてコメントがありましたらということでした。 市川:そうですね、やはり日本という島国という中でこの伝統というものと現代のエンターテイメント性、事務所ということですかね、そういったようなことでやっぱり日本人とすると以外と抵抗なく今あるんですけれど、海外の方から見るとやっぱりそれはだいぶ抵抗のあることであるっていうことを認識しなくてはいけないのは、われわれ俳優ではなくてやはり経営している側の人間、トップに立っている事務所の社長、会長たちがそれを認識しなくてはいけないことではないかなと思います。 でも、やはり海外の方々の思考、影響というものを大きく受けるのが日本の状況でございますから、やはり今、いろんなことがだいぶ変化が起こってきているなと、そしてまた変化があと数年で、事務所なりそういったことも、体制を変えていくようなことになっていくんだろうなというふうに思いますし、それに日本のアーティストの人たちが、私も含めて、不満がある場合は、よりもっと違う世界に旅立って経験を積まなくてはいけないという、お互いに日本の芸能界というものにはやらなくてはいけない壁がいっぱいあるように感じます。 司会:それでは質疑応答に入ります。
子供のころから未来が分かるのは負担なのか、安心なのか
マクニール:【エコノミスト 00:24:25】の【マクニール 00:24:27】です。2つほど質問があるんですけれども、まず1つ目は、歌舞伎というのは非常に体力を使うものであると思うんですけれども、日々の生活の中で、トレーニングですとか、どういうふうに健康を維持されているのかということがまず1つです。 そして2つ目。ご自身の経験についてお伺いしたいんですけれども、本当に若いときから、子供のころから自分の未来がこういうふうになるということを知るということは、それはある意味で負担に感じることになるのか、それとも自分の未来がちゃんと分かるということが、ある意味で安心になるのか、そのときの自分の心についてぜひ教えてください。 市川:はい。歌舞伎というのは、そうですね、今おっしゃるように、ものすごい重労働なんですね。そして、型というもの、決まっていることをやっていくということは非常に、とても鍛錬が要ることであって、もちろんオペラですとかバレエですとか、そういったものに近い環境の中で、日々、舞台に出ます。しかしながら、また、化粧と、また衣装というもの、また、かつらというのものが、非常に、演目にもよるんですけれども、とても重たい場合がございます。 そしてまた荒事といいまして、市川團十郎家の場合は、特に歌舞伎十八番を中心とした荒事というものがございまして、衣装が思いものですと40~50キロ、もう少し重たいものを着ながら舞台を務めると。それが、基本的には25日間、1カ月興行、休みなく、その演目だけではなく、ほかにも2~3、役を務めるということは、非常に体にとっても心にとっても、弱いとできませんので、私としてましても、今はもう食事制限、そして運動も日々、毎日、走るやストレッチや体幹のトレーニング、そして物を使った、例えば刀を持ったりとか、道具を持つということに対しての使う筋肉の鍛錬とか、睡眠時間も仕事というふうに思いますし、入浴方法も仕事と思ってます、舞台中は。ですから、舞台がないとき、やらないかというと、実は舞台のないときもやっておりまして、比較的、体調管理には気を付けております。 あと、もう1つの質問ですけれど、生まれたことによってこの道が決まっていることが安心なのか不安なのか。私の場合は不安のほうが多かったですね。先が決まっているからといって、歌舞伎役者として、いくら市川家の御曹司として生まれたからといって、自分が成功者になれるとは決まっているわけではないんですね。ですから、新之助という名前になれるのか、また海老蔵というものになれるのか、そしてまた團十郎というものになれるのかというように、私がやはり怠っていた場合は、いくら将来が決まっていようとも、なれないものだというふうに育てられてまいりました。ですので、基本的には、将来が決まっていることによって安心するということは、ほとんどございませんでした。 でも、決まっているからこそ早くから準備をするということができる、ということがほかの方とは違っていたと。決まっていることが逆に重荷となるという感覚も、実はあまりなく、ストレスというかそういうものはあるんでしょうけれども、それはもう自分の運命といいますか、持って生まれた宿命と申しますか、それはもう歌舞伎の家に生まれたっていうことは、もう、自分で選んできたんだっていう認識に切り替えないといけないというふうに子供のときから思っておりましたので、自分が子供のときから、先ほどご質問にもありましたけども、自分が子供ができたらその子の教育の仕方はどうしようかとか、そんなようなことを考えるようなことで、あんまり不安はなかったのかなと思いますね。