私は病弱でずっと母には迷惑をかけてきました。母は今も心配して頻繁に連絡をくれます。自分が死んだら母にすべての遺産を渡すことはできますか?
相続させないための「相続廃除」
遺留分さえも渡したくない、という場合に何か手だてはあるでしょうか? 相続権を失う場合のひとつに、「相続廃除」があります(民法第892条)。被相続人に対して虐待をし、もしくは重大な侮辱を加えたり、その他の著しい非行があったりした場合に、被相続人は、その相続人の廃除を家庭裁判所に請求できます(※3)。 Aさんは、「病弱な自分にあまり関心がない」ことを悲しく思っていますが、この他に廃除が認められるほどの特段の事情があるようには見えません。気持ちが離れていても、長年一緒に築いてきた財産までも、その貢献度を一方的にゼロにするのはよほどのことがないと難しい、ということです。 妻が納得しないと思えるなら、少なくとも遺留分は妻に渡るものとして、遺言書を作成することになるでしょう。なお、個別のケースについては弁護士等専門家にご相談ください。
最後に
ここまで、母親の受け止め方についてはまったく触れていません。 遺産金額の多寡に関わらず、配偶者より多くもらうことが心の負担にならないでしょうか。もし裁判ともなれば、心労が重なるでしょう。 また、遺産額によっては高齢の母親が使い切れずに亡くなってしまうかもしれません。その場合は子も孫もいないので、高齢のきょうだいや遠い親族が相続する可能性があります。あるいは、相続人がいなければ最終的に国庫に帰属します。 残された母親の立場も考えると、妻に渡らない3分の1の遺産は、団体等に遺贈寄附するなど第三者に生かしてもらう残し方もあるでしょう。 出典 (※1)国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分 (※2)法務省 相続に関するルールが大きく変わります (※3)デジタル庁 e-Gov法令検索 明治二十九年法律第八十九号 民法 執筆者:伊藤秀雄 FP事務所ライフブリュー代表 CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員
ファイナンシャルフィールド編集部