創業来の大ピンチ?フォルクスワーゲン「大幅減益」の理由、足を引っ張る…意外な原因
2024年10月末、フォルクスワーゲンの大幅減益が報じられた。創業87年の歴史の中で、初めて自国の工場を閉鎖し、数千人の雇用削減に動く可能性が出てきているなど、同社経営に異変が起きている。なぜこれほど苦しんでいるのだろうか。調べてみると、ビジネスを展開する土地(ドイツ)に起因する意外すぎる原因があった。 【詳細な図や写真】ドイツでビジネスを展開する企業が直面する、ドイツならでは「コストの問題」とは…(Photo/Shutterstock.com)
初の工場閉鎖? フォルクスワーゲンの厳しい現状
フォルクスワーゲンが厳しい状況に立たされている。フォルクスワーゲンの1~9月までの営業利益は、前年比21%減の129億ユーロ(約140億ドル)となった。87年の歴史で初めて自国の工場を閉鎖し、数千人の雇用を削減する可能性すらあるのだ。 フォルクスワーゲン最高財務責任者(CFO)アルノ・アントリッツ氏は、10月23日にアナリストや記者に対し、急激な減益となった営業利益の発表に際して次のように述べている。 「私たちは素晴らしいクルマを作る方法を忘れたわけではありません。ただし、自動車メーカーのドイツ事業におけるコストは、競争力を持つには程遠いものです」 このアルノ・アントリッツ氏が述べた「ドイツ事業におけるコストは、競争力を持つには程遠い」という問題は、フォルクスワーゲン1社が抱える課題ではなさそうだ。 ヨーロッパ最大の経済大国であるドイツのGDPは、国際通貨基金(IMF)によれば「今年の経済成長率はゼロ」と予測されており、主要国の中で最も低調な水準にある。世界経済が総じて堅調であるにもかかわらず、ドイツ経済の厳しい実態が浮き彫りになっている。 ドイツ経済界からは「手詰まり」「破滅的な下落」などの悲観的なコメントが相次いでいる状況だ。なぜ、ドイツ経済はこれほど停滞しているのか。ドイツ企業が直面している「コストの問題」とは何か。
フォルクスワーゲンの停滞を招いた…ドイツの“ある政策”
1ページ目を1分でまとめた動画 原因として挙げられるのはエネルギー価格の急騰である。特に、ロシアからのエネルギー供給が制限される中で、国内にあった原発をすべて停止し、再生可能エネルギーへの移行が加速しており、エネルギーコストの増加が企業経営に大きな打撃を与えているのだ。 こうした状況は、日本の将来を見ているような気がしてならない。日本国内でも「脱原発」が一定の勢力を形成しており、再稼働についても世界でも類を見ないレベルの安全基準が各電力会社に求められているため、再稼働は遅々として進んでいない。 生成AIなどによってエネルギー需要が爆発的に増えることが予想される中、エネルギーの安定供給への不安は増大している。ドイツの事例は、日本の再生可能エネルギー政策の限界を示唆し、産業競争力を維持するための具体策を早急に講じる必要性を訴えていると言えるだろう。ドイツで何が起きているのか、じっくり見ていこう。