創業来の大ピンチ?フォルクスワーゲン「大幅減益」の理由、足を引っ張る…意外な原因
今のままだと…ドイツは「日本の未来」と言える理由
たとえば、ドイツの著名な家電メーカーであるミーレ社は、エネルギーコストの増加が経営に重くのしかかる中、1300人の従業員削減を決定した。また、洗濯機の生産拠点をドイツからポーランドに移すことで、運営コストを削減する計画を発表した。このような動きはミーレ社に限らず、掃除機メーカーのケルヒャーもエネルギーコストと生産コストの低減を求め、アメリカや東ヨーロッパへの拠点移転を進めている。 ドイツの著名なエネルギー政策の専門家・フリッツ・ヴァーレンホルト氏は、ドイツ経済の失速について次のように指摘する。 「ドイツでは、年間約120日間、風力発電がほとんど行われず、夜間は太陽光発電ができない。この不足を補うために使用される水素による発電は、通常の電力の約4倍のコストがかかり、経済的な繁栄や雇用に影響を及ぼす」 「世界で最も安全な原子力発電所であるイザール原発を廃炉にし、フランスやチェコの原子力発電から電力を輸入しているのは、笑えないジョークだ。オランダ、ベルギー、アメリカは原発の寿命を延ばし、私たち(ドイツ)は原発を停止しようとしている」 (出典:ドイツ経済ニュースDWN、7月27日) フォルクスワーゲンの苦境は、ドイツのエネルギー構造が生み出したものである。エネルギー価格の高騰が企業経営に深刻な影響を及ぼしている。日本も他人事ではなく、原発の再稼働が進まないようでは、同様のリスクを抱える可能性がある。もしトヨタが国外へ移転したら、日本経済はどうなってしまうのか。 再生可能エネルギーの活用や省エネ技術の導入を全否定するわけではないが、適切なエネルギー供給のバランスを考えていく必要がある。産業の競争力を維持し、経済を支えるためにも、日本も長期的な視点からエネルギー政策を果断に見直していかなくてはならない。
執筆:ITOMOS研究所所長 小倉 健一