『光る君へ』まひろと道長、子を授かった石山寺、まひろがつけていた赤い帯って?いけにえの姫・彰子とイメージが重なる女三の宮
◆平安時代の装束の実物は残っていない 現代人には謎の多い平安装束。普段は目にすることがないだけに興味津々というわけで、この連載でも、装束について度々取り上げてきました。専門家を訪ねたり、資料を紐解いたりするうちに、私自身もその奥深き世界の虜になったのです。 実は、平安時代の装束の実物は1着も現存していないとか。 宮中の装束文化は脈々と受け継がれているものの、1000年前の装束そのものを今、見ることはかなわない。特に色彩については、現物が無い以上、想像するしかないというのが現状なのだそうです。 紫式部は、当時、どんな色や文様の装束を好み、身につけていたのか――興味はあれど、事実を知る手立てはなさそうです。「紫式部日記絵巻」には紫式部の姿も描かれていますが、この絵巻が制作されたのは鎌倉時代初期と、紫式部が生きた時代から200年ほど後のこと。装束の色や文様などのディテールは想像で描かれたのではないでしょうか。
◆「桜かさね」の細長 私がひそかに楽しみにしているのが、『光る君へ』に細長が登場するかどうかです。 細長は、高貴な女性が日常のハレの装いとして着用した装束。唐衣の裾を細長く伸ばしたような形になっていて、袿姿の上に羽織ったとされています。(ただし諸説があり、はっきりしたことは不明) なぜ細長に注目するかというと、『源氏物語』の有名なエピソードのいくつかに、印象的な形で出てくるから。代表的なのは、光源氏の邸宅・六条院で開かれた蹴鞠の会の場面です(巻34「若菜上」)。 女三の宮(光源氏の正妻)が御簾内から蹴鞠を眺めていたところ、飼っていた猫が飛び出した拍子に御簾が跳ね上ります。そして、柏木が女三の宮の姿を垣間見てしまう。そして彼女に心を奪われるのです。 このとき女三の宮は、「桜かさね」(表地は白、裏地は赤で、裏地の赤い色が表地にほのかに透けて桜色に見える「かさね色目」)の細長を着ていました。 表と裏で異なる色の布地を重ねる趣向を「布のかさね色目」と呼びます。平安時代の絹糸は細く、織られた生地も薄かったため、色が透けることで微妙な色合いが生まれたのです。 なかでも、特に人気があったのが「桜かさね」でした。 ただし、桜といってもピンクのような色ではありません。現代に再現されたものを見せてもらうと、かなり白に近い。それが夕暮れ時にほの白く浮かび上がる桜の花の風情を表していたとのこと。 平安京の人々の細やかな感性と美意識には脱帽です。
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