母さんが生きていた頃はよかったな…〈50歳独身息子〉と2人っきりになった〈74歳男性〉が思い出の詰まった「5LDKの我が家」を手放す決心をしたワケ【相続の専門家が解説】
妻が亡くなって、50歳独身の息子と2人暮らしとなり、生活に不便を感じていた74歳の和彦さん。自宅も、和彦さんの両親、夫婦、子どもの6人で住んでいた時代に建て替えたもので、築40年は過ぎており、維持をするのに苦労していました。本記事では、戸建てからシニアマンションへの住み替えという選択肢について、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。 年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
独身の息子と2人暮らしに
74歳の和彦さんは、10年前に妻が亡くなり、50歳の独身の息子と2人暮らしとなりました。娘は結婚して孫にも恵まれ、家族4人で家を買って生活しています。 妻が元気なころは、和彦さんも息子も仕事が忙しく家のことは妻に任せきりでした。和彦さん夫婦は、夫は外で仕事、妻は専業主婦で家を守るのが普通のことだったと言います。 和彦さんが定年になり、リタイアして時間ができたら、夫婦で旅行に行こうと話をしていた矢先、妻は脳梗塞で倒れてあっという間に亡くなってしまったのでした。
広い自宅の維持が大変
和彦さんの自宅の土地は110坪あり、半分が庭です。建物は50坪あり、5LDK。和彦さんの両親、夫婦、子どもの6人で住んでいた時代に建て替えたもので、築40年は過ぎました。両親が亡くなり、長女が嫁いで、3人暮らしの時期が長かったのですが、妻が家も、庭も丁寧に掃除をしてくれていましたので、いつもきれいな自宅が保てていました。 ところが、妻が急逝してから、和彦さん親子は日々、掃除をして維持してくれていた妻のありがたさを実感したといいます。また、掃除だけでなく、日々の食事の用意にも頭を悩ませているそうです。荒れ果てた庭を前に人知れず涙を流す日々がしばらく続いていました。
相続対策でまずできることは「自宅の住替え」
和彦さんが今回相談に来られたのは、これからの相続についての悩みからでした。自宅の他に貸宅地もあり、預貯金も合わせると基礎控除4,200万円は軽く超え、1億円以上の財産になります。同居の特例を生かしても、まだ相続税がかかる範囲です。 そこで、私が最初にアドバイスをしたのは、広い自宅を売却して、マンションに住み替えるという選択です。土地が小さくなることで評価がうんと下がります。分譲マンションは購入する価格(時価)の30%程度の評価に変わります。自宅の土地の評価は5,000万円程ありますので、マンションに住み替えることによって1,500万円ほどの評価の不動産に変わるのです。 自宅の売却の査定額も出して、売却することをおすすめしました。