【バスケ】「有明の死闘」を制した琉球ゴールデンキングス 大きな一勝を呼び込んだ岸本隆一の超絶3Pと“奇妙な数字”
20秒、19秒、18秒…。試合の残り時間を示す数字が、刻一刻と減っていく。有明コロシアムを6千人超の大歓声が包む中、ダブルオーバータイムにまでもつこれんだ死闘が最終局面を迎えた。 スコアは78ー80で琉球ゴールデンキングスの2点ビハインド。アレン・ダーラムがペイントアタックしてアルバルク東京のディフェンスを収縮させ、左45度で待ち構えていた岸本隆一にキックアウトした。残り12秒、スリーポイントラインから優に1m以上離れた位置でボールを掴む。安藤周人が眼前で左手を上げていたが、お構いなし。迷わずにキャッチ&シュートを放った。 「あの瞬間、決められる自信がありました」 バックスピンがかかったボールが綺麗な弧を描く。リング奥の縁に「ごっ」と音を立ててぶつかり、ネットに吸い込まれると、琉球ベンチのメンバーが両手を突き上げながら飛び出し、アウェーの地で選手たちの背中を押し続けた応援団も感情を爆発させた。当の岸本には、不敵な笑みがこぼれた。 最後のA東京のポゼッションを耐え抜き、81ー80でチャンピオンシップ(CS)クォーターファイナルの第1戦を制した琉球。生え抜き12シーズン目の“ミスターキングス”の活躍で先手を取り、クラブ初の2連覇に向けて最高のスタートを切った。
吹っ切れた岸本「勝因は我慢強いディフェンス」
試合は五分五分の展開でスタートしたが、第2QでA東京が堅守とリバウンドで優位に立ち、29ー43で折り返した。後半に入ると、琉球はピックの使い方を修正して前半無得点だった岸本が覚醒。第3Qで3連続3Pをヒットさせ、猛追する。さらにもう一人の日本人エースである今村佳太が第4Qだけで3P2本を含む8得点を挙げ、土壇場で追い付いてオーバータイムに持ち込んだ。 一回目のオーバータイムは今村が5ファウルで退場しながらも接戦に持ち込む。ただ73ー73の同点で迎えた残り6秒、松脇圭志がフリースローを2本外して勝負を決められず。それでも我慢を続け、ダブルオーバータイムの末に勝利をもぎ取った。 勝負を決める3Pについて、岸本が振り返る。 「第4Qの最後の方は佳太がずっと引っ張ってくれて、彼が退場したこともあって『自分がやるしかない』という思いもありました。自分たちの強みはリバウンドなので、自分が外しても必ずフォローしてくれる選手がいる。実際にやっている感覚としては、もう理屈じゃない。空いたら行くべきだと思っていましたし、ああいう状況下では迷いが一番良くない。シンプルを心掛けてやりました」 レギュラーシーズンの最終盤では4連敗をするなど調子を落とし、最終戦の結果で名古屋ダイヤモンドドルフィンズにまくられて西地区7連覇を逃した琉球。厳しい戦いを予想する見方も多かったが、この一戦では本来の持ち味である我慢強さを全員が体現した。持ち直した要因は何だったのか。 「メンタル的なところで言えば、吹っ切れたと思います。自分たちはレギュラーシーズンで、守ってきたものをたくさん手放してしまった。もう手放しようがないというか、個人的にはもう『当たって砕けろ』だと思っていました。それがいい方向にいったかなと感じます」 その「吹っ切れた」という部分が顕著に現れたのが、ディフェンスの強度だ。今シーズンは前線からプレッシャーを掛ける機会が昨シーズンに比べて減った印象だったが、この試合では相手のハンドラーからターンオーバーを誘う場面が度々見られた。岸本が続ける。 「みんな我慢しようということを言っていました。その我慢の中で、(第3Qに自分の)3Pから始まって、その後にダーラムがスティールしてファストブレイクに持っていくところとか、ああいうモメンタムが必ず試合中にあると思っていました。ディフェンスが崩れなかったことが一番の勝因。ダブルオーバータイムの点数ではなかったので、そこはお互いですが、ディフェンスで修正しながら戦えたと思います」