なでしこGK初のビッグクラブ移籍が実現。山下杏也加が勝ち取ったマンCからのオファー「サイズは関係ないと証明できた」
「もう一度サッカーを学べる場所がある」幸せ
――山下選手はこれまであまり海外挑戦については語ってこなかった印象がありますが、希望はあった中で、なかなかタイミングやオファーの条件が一致しなかったのですか? 山下:そうです。コロナ禍に入る前に、スウェーデンのクラブから「興味がありますよ」と話をもらったんですが、そのタイミングでは話が流れてしまいました。キーパーはコーチング能力やコミュニケーション力が必要ですが、英語や他の言語で指示をしなければいけないことに対して自信がなかったんです。サッカーできる場所さえあれば語学力は自然と上がっていくイメージもあったんですが、いざとなると、その壁に限界を感じてしまって。その時は、2023年のワールドカップとパリ五輪で結果を出すことを最優先に考えていたので、国内で試合に出続けることを優先しました。 ――「しっかりとパスをつなぐチーム」など、チームスタイルへのこだわりはなかったんですか? 山下:プレースタイルは大事ですけど、そんなことは言っていられないと思っていましたし、最初から理想を高くして選択肢を狭めるつもりはなかったです。INAC神戸でも戦略的にロングボールを蹴ることはあったので、つなげるスタイルのチームがベストだとは思っていましたけど、「蹴らずにつなぎたい」というようなこだわりは、以前よりはなくなっていました。 ――その意味では、マンチェスター・シティは、環境としてはベストに近いのですね。長谷川選手からも話は聞いていたと思いますが、実際に練習に参加してみてどうでしたか? 山下:(2020年まで所属した)ベレーザ時代に監督だった永田(雅人)さんから教わっていたことがすごく生きていて、英語で指示をされても、大体のニュアンスで言いたいことがわかるんです。永田さんはポジショニングやビルドアップなどの基礎を大事にしていたので、その時期に3年間しっかり学ぶことができてよかったですし、海外でトップレベルの選手たちにそれが通用するので楽しいです。忘れかけていたこともあるのですが、タイミングやテンポ、パススピードなどを監督とキーパーコーチが指導してくれて、もう一度サッカーを学べる場所があるのは恵まれているなと思います。 ――男子チームのGK練習を見る機会はあるんですか? 山下:まだ見ていないんですが、練習は同じ敷地内でやっているので、休みやタイミングがあれば、エデルソン選手のトレーニングも見てみたいと思っています。