アイシン高丘、石炭コークスからバイオ成型炭に熱源転換 インドネシアのパーム油会社と合弁設立
アイシングループがカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)に向けて熱源転換を進める。「バイオ成型炭」を開発したアイシン高丘(奥田誠社長、愛知県豊田市)は、インドネシアのパーム油生産会社「トリプトラ・アグロ・ぺルサダ」と合弁でバイオ成型炭の製造会社を設立すると12日に発表した。2030年には自社消費分を全てバイオ成型炭で賄い、外販にも乗り出す。奥田社長は「日本の鋳造業界のカーボンニュートラルへの貢献と、ものづくりの競争力向上に取り組んでいく」と語った。 「ATPバイオインドネシア」を7月に設立する。資本金は1千億ルピア(約10億円)で、アイシン高丘が51%、トリプトラ社が49%を出資する。量産を始める25年は年産1万2千㌧、27年に3万6千㌧、29年に6万㌧と段階的に生産量を増やす。29年までの累計で6千ルピア(約60億円)を投資する。 バイオ成型炭は、「アブラヤシ」からパーム油を精製する過程で出るヤシ殻が原材料だ。インドネシアはアブラヤシの生産量が世界一で、トリプトラ社は年間100万㌧ほどのパーム油を生産する。合弁会社が運営するボルネオ島のバイオ成型炭工場でも、トリプトラ社がパーム油を精製する過程で出るヤシ殻を活用する。 エンジンや駆動系の鋳造部品を手掛けるアイシン高丘は、アルミを溶かす鋳造工程で多くの二酸化炭素(CO2)を出してしまう。石炭コークスを熱源とする溶解設備「キュポラ」を電気炉に置き換える方法もあるが、設備投資がかさむうえに溶解能力はキュプラの方が高い。 この点、バイオ成型炭は石炭コークスに匹敵する発熱量を持つ一方、アブラヤシが成長する過程でCO2を吸収するため、ヤシ殻を原料とするバイオ成型炭を燃やしてもCO2を相殺できる。つまり、石炭コークスからバイオ成型炭に置き換えることで既存設備でもカーボンニュートラル化が実現できる。 日本国内の石炭コークスのキュポラ向け消費量は年間約30万㌧。アイシン高丘はこのうちの6万㌧を消費している。30年には自社で消費する石炭コークス分をすべてバイオ成型炭に置き換え、キュポラを使用する他の鋳造メーカーにも外販していく方針だ。