「性教育はエロいものだと思ってた」──高校生が自分たちで考える「人生の役に立つ授業」【#性教育の現場から】
「性と生」を担当するどの先生も、授業を通じて生徒とのコミュニケーションが増える、と口をそろえる。佐藤さんのように先生に直接、相談をしに来る生徒もいる。「性と生」を担当して3年目の町井陽子先生(35)にも経験がある。 「授業のあとに『たぶん自分はDVを受けていると思う』という相談もありました。また、他の先生の『性と生』の授業を受けて、『婦人科に行ったほうがいいですか?』と担任の私に聞きに来ることもあります。授業がきっかけになって、周りの頼れる人に生徒は頼ってくれるようになります」 もし授業がなければ、この生徒は自分がDVを受けていると気づけなかったかもしれない。 「性と生」の授業の目指すところを、水野先生はこう語る。 「授業の基盤になっている『ガイダンス』は、現実を一面的に見るのではなく、多方面から批判的に検討すること、その視点と分析の力量を身につける道筋を学習者に提供しています。そのため授業では人の考えを知りながら自分も知っていくようにする。そしてより良い行動選択が可能になるように力をつけていくのです」 大東学園高校では、「性と生」の履修を終えた2年生が新1年生へ「先輩からのメッセージ」を残す。そこにはこんな意見が書かれていた。 「性と生を学ぶことは間違った行いかそうでないかなど、自分で判断できるようにするためでも、相手を不快にさせない、困らせてしまわないためでもあります」 「これから1年間の授業を大切にしてしっかりと考えていってほしいです。そうすれば人生が変わっていくと思います」 「『性と生』とは私たちの人生そのものです。当たり前にご飯を食べたり、寝るように『性と生』も当たり前で身近なことなのです。これをしっかりと身につけることで、これからの暮らしがより豊かになることは間違いないでしょう」
--- 岡本耀(おかもと・よう) フリーライター。主に性教育の分野で取材・執筆活動を行う。