「性教育はエロいものだと思ってた」──高校生が自分たちで考える「人生の役に立つ授業」【#性教育の現場から】
先生が、「LINEの連絡先を消されても、彼は怒っていない。なぜかわかる?」と聞くと、生徒から「好きだから」の声。先生は「それが『恋愛による勘違い』。好きだったらそうしないといけないと思ってしまう。この『恋愛による勘違い』も暴力の要因になる」と伝える。そして12の「恋人同士ならこうしなければ」と思いがちなことを生徒に提示する。生徒は「その通り」と思うものに◯をつけていく。比較的男女の差が見られた質問は、以下の三つだった。 「深く愛し合っていれば、お互いの気持ちが分かるはずだ」に◯をつけたのは、女子1人に対し男子は10人。「恋人同士の約束事は何より優先するものだ」に◯は女子3人に対し男子11人。「愛されるためには、相手の期待にこたえなくてはならない」は女子0人に対して男子は5人が○だった。 先生が「実はこのアンケートの質問は、すべて『恋愛による勘違い』だと言える」と告げると、教室の空気が少し変わった。 担当した水野哲夫先生(68)はどのような意図でこの授業を行っているのか。
「アンケート結果から、『恋愛とはこういうものだ』という思い込みの仕方が男子と女子とで違っている、ということは言えると思います。この社会の中でドラマや映画、マンガなどの形で流通している恋愛に関する常識みたいなものの影響を受け、それはジェンダー(社会的・文化的につくられる性差、性別役割)の差をもって受け止められている。このアンケートはまずこの違いに気づいてもらい、なぜなのか考えるきっかけにすぎません。しかし、考えるきっかけがあるのとないのとでは大きく違います」 この授業では、生徒が意見を自由に言え、聞けるようにしている。先生は生徒が話をしていると、その内容に耳を澄ましている。 「騒がしいのは何かを考えているということなので、ただ静かにしているよりずっといいんです。教員が考えを言うこともありますが、教員の言うこともクラスの意見の一つでしかありません」(水野先生)