紙とマルチメディアの融合 AR導入進む自治体広報誌
目の前の紙面上で動画が再生されているように見える技術「AR(拡張現実)」。都道府県や市町村が発行する自治体の広報誌でこの技術を導入する動きが広まっています。大阪府豊中市や北海道登別市がARを導入したほか、11月1日からは大阪府が「府政だより」でARとの連携を始めました。自治体広報誌がARを導入する背景にはどういった事情があるのでしょうか?
ARってどういうもの?
AR(Augmented Reality)は拡張現実と言われます。紙や風景にスマートフォンを撮影するようにかざすと、スマートフォンに映しだされた実際の画面に、動画や画像が重ね合って表示される機能です。 つまり、ARを使うと、あたかも紙面で動画が再生されているように見えるのです。スマートフォンを傾けたり、紙面から離したりしても、スマートフォン上の動画が、紙面にぴったりとくっついているのでとても不思議な感じがします。大阪府の「府政だより」の場合、表紙にスマートフォンをかざすと、画面上でさらに表紙が開き、大阪府の農産品の動画が音楽とともに流れるようになっています(ARの利用にはスマートフォンに対応したアプリをインストールする必要があります)。
紙の表現力には限界が
ARに関心が集まる理由ですが、第一に、紙という媒体では表現に限界があるということです。 紙の上では文字や画像以上の情報を提供できません。同じ画像でも白黒の場合もあり、伝えられる情報量や表現に限りがありました。こうした制限をARなら解消できます。紙面上で実現するマルチメディアの融合です。 登別市の広報誌は二色刷りのため「より豊かな表現を考えた」(同市)といいます。豊中市は救急救命を特集した9月号で心臓マッサージの方法などをARで提供しました。イラストでもいいのではないかという議論がありましたが、「1分間に100回のテンポで5センチメートル胸部を圧迫する」など、細かいニュアンスを伝えるには動画が最適だと判断。豊中市広報広聴課には、市民から「新しい技術を使ったことに感動した」「非常に分かりやすく伝わった」と反応があり、同課では手応えを感じています。