1日16時間働き、15日間で250万稼ぐ…韓国に「出稼ぎ」に行った日本人女性が話した"大金の使い道"
海外に「出稼ぎ」に行く日本人女性が増えている。一体なぜなのか。出稼ぎに行った女性やブローカーらへの取材をまとめた週刊SPA!編集部 国際犯罪取材班『海外売春――女たちの選択――』(扶桑社新書)より、男性記者が韓国で出会った女性のエピソードを紹介する――。(第1回/全3回) 【写真】古びたオフィスビル。風俗店のある気配はまったくない ■「海外出稼ぎ」は1カ国15日間がセット ---------- ソウルの中心部から車で30分ほどの郊外「イルサン(一山)」にある古びたビルに行くと、20歳前後の若い女性が待っていた。関西なまりで名乗った「ナオ」にフリーの基本料金17万ウォンとオプション分の25万ウォン、合わせて42万ウォン(約4万5000円)を渡すと……。 ---------- ベッドに敷かれたバスタオルの感触を背中で確かめつつ、横たわるとさらに尋ねた。 「韓国にはいつまでいるの?」 「あと10日かな?」 彼女のような「海外出稼ぎ」は同じ国には15日間滞在というのがひとつのセットだという。観光ビザで入国しているので、それ以上長いと出国の際に疑われることがあるのと、滞在の途中で生理がきて「仕事」ができなくなるからだという。 しかし、その15日間で250万円を稼ぐ、というのが韓国での出稼ぎのパッケージだと彼女は言った。 単純計算で、一日あたり17万円弱――。 ■女性の取り分は「250万円の半分くらい」 薄給の記者からするとそれは驚くべき数字だった。気を取り直してさらに聞く。 「250万円はいけそうなの?」 「今のところ順調かな!」 女は屈託ない笑顔を見せた。 「客が払ったカネの半分くらいはもらえるものなの?」 ずいぶんと突っ込んだ質問をしたと自分でも後悔したが、異国で母国語を話す記者に心を許したのか、ナオは意に介さず答えた。 「そう、ちょうど半分くらいや」
■16時間勤務、ほぼ予約で埋まっている 聞けば、正午から朝の4時までの16時間勤務。コースによって異なるが、今日現在、彼女にはほとんど空きがなく、ほぼ予約で埋まっているというのだ。 空いた時間には、このベッドに寝転んで、スマホで動画サイトを見たり、仕事に使ったバスタオルや自分の身の回りのものを洗濯したり、日本にいる女友達と電話をしたりしている。確かに部屋を見渡すと、パソコンやテレビなどひまを潰せるようなものは何ひとつない。壁の時計の針だけがチクタクと時を刻んでいる。目を凝らすと文字盤にはSEIKOとあった。 「韓国のほうが日本よりお金はもらえるの?」 「まぁ、本番は日本と同じくらいやねんけど、こっちのほうがオプションが高くて」 たしかにAV撮影のオプションつきだと、40分で約4万5000円。決して安くはない。日本で撮影のオプションなどつけるともっと高くなるのではないか、という疑問が湧いたが、あえて口にしなかった。 「ねぇ、話ばかりしてないでそろそろ始める?」 ナオは記者の体をさすり始めた。制することはしなかったが質問は続けた。 「ご飯は何を食べているの?」 ナオはベッタリと体を寄せながら答えた。 「下にコンビニあるやん」 「おいしいものは食べないの? せっかくだし観光は?」 「お金稼ぎに来たんだから……」 ■「カレシおんねん…」沈黙が訪れる そして何かを思い出したかのように、記者の体をさする手を止めた。 「まぁ……ほんまは、今日ジョングクの誕生日やってんな。ほんで、ソウルに行こうと思ったけど、怖くていけんかった」 言葉が通じない外国でカラダを売りながら、電車でわずか30分ほどの距離にあるソウルに行くのが怖い……理解に苦しむ話だった。 「お兄さん、勃たないね」 記者の頭の中で新大久保で2世のイから忠告された言葉がこだましていた。 (絶対に本番はするな――) それまで饒舌に、そして雰囲気を盛り上げようとしていたナオが急に黙り込んだ。沈黙に耐えきれなくなり、記者は顔をナオの口に近づけた。しかし、避けられた、それは頑なだった。 「なんで? ダメ?」 「いや……」 「どうして」 「カレシおんねん……」