クロちゃん×小田原ドラゴン初対談「友達を亡くすということ」【1】共通の友人への鎮魂歌
ギャグ漫画家で、近年は愛犬や車内泊をテーマにした作品でも支持を集める小田原ドラゴン。そんな彼の漫画に高頻度で登場したライター・石川キンテツさんが、今年7月に亡くなった。キンテツさんをめぐっては、クロちゃん(安田大サーカス)も“キャバクラ仲間”として行動をともにすることが非常に多かったという。本企画は、クロちゃんの「どうしても小田原ドラゴン先生とキンテツについて話したい」という思いで実現。“愛すべきクズキャラ”として一部でカルト的な人気を誇ったキンテツさんへの2人なりのレクイエム。できうる限りノーカットでお送りするため、3回にわたるが、ぜひ最後まで読んでいただければ(前中後編の前編)。 【写真】小田原ドラゴンが描いた石川キンテツのイラスト ──今回はクロちゃんのキャバクラ仲間であり、小田原ドラゴン先生の漫画作品にもしばしば登場する石川キンテツさんの追悼対談となります。お2人は今日が初対面なんですか? 小田原 そうですね。もちろんクロちゃんの話はキンテツからよく聞いていましたが。 クロちゃん いきなり「キンテツ」とか言われても、この記事を読んでいるほとんどの人は意味がわからないと思うんです。そのへんを説明するためにも、まずは俺とキンテツの出会いからお伝えしますね。 ──大変ありがたいです。 クロちゃん あれはたしか28~29歳くらいのときだったかな。今から15年くらい前ですよ。当時、安田大サーカスは文化放送でラジオ番組を持っていて、そこの(放送)作家さんとよくキャバクラに行っていたんですね。そうしたら、その作家さんが「キャバクラの師匠がいるので、ぜひクロちゃんにも紹介したい」と言ってきたんです。その頃は文化放送も四谷にあり、とりあえず新宿の『NOW』というお店に向かいました。 小田原 『NOW』か……。懐かしいな。僕もキンテツと一緒に行ったことがあります。 クロちゃん お店の前には角刈りの大男がいて、それがキンテツだったんです。キャバクラの師匠と呼ばれるわりにはモテる要素もなさそうだし、奇妙な印象を受けましたね。そして「外は寒いので、とりあえず店内に入りましょう」ということになりまして。すると奴はいきなり「僕はこういう者でして……」と『小田原ドラゴンくえすと』(小学館)の単行本を渡してきた。「石川キンテツ」という自分の名刺を渡す前に、ドラゴン先生の漫画を差し出してきたんですよ。 ──知らない人のために説明すると、『小田原ドラゴンくえすと』はドラゴン先生とキンテツさんが様々なスポットを訪問するルポ漫画です。 小田原 でもクロちゃんとキンテツが『NOW』で最初に会ったとき、おそらく僕とキンテツは絶縁関係にあったはずです。絶縁は2回しているんですけど、1回目の絶縁期じゃないかな。 クロちゃん 俺もキンテツとは絶縁したんですけど、ドラゴン先生は2回も絶縁したんですか(笑)。 小田原 1回目の絶縁は、それこそ『小田原ドラゴンくえすと』が原因だったんです。あの男、とにかく仕事しないんですよ。最初のうちこそ真面目にやっていたんですけど、途中から待ち合わせに遅刻してくるわ、決められたレポートを提出しないわ、サボリ癖が目に余るようになりましてね……。それで「もう辞めてくれ」って自分から伝えたんです。 クロちゃん ひどい話だなぁ。ただ、俺がキンテツから聞いていた話とは全然違いますねー。 小田原 ん? どういうことですか?