ドイツ6部のアマチュアクラブとミズノがコミットした理由。岡崎慎司との絆が繋いだ新たな歴史への挑戦
人と人の絆が作り出す無尽蔵の力が新たな歴史を作り出す
ユニフォーム作成が決まったあと、ミズノヨーロッパはユニフォームのリマインダー化に取り組んだ。岡崎がイメージする将来像、ゴールを深いところで理解できるまでコミュニケーションを積み重ねた。 「目指すゴールやミッションを細部までデザインに落とし込むことができれば、選手やクラブ関係者がこのユニフォームを見るたびに『そうだ。自分たちのミッションはこれだったんだ!』と思い出せる機能を持たせられるのではないかと思ったんです」 “世界への道を切り開き、可能性を解き放つ”というクラブのミッションを表現するために、「強さ」と「自由」という2つのコンセプトで今回のデザインに落とし込んだ。そして厳選した3案の中で、バサラの語源がダイヤモンドというところから着想を得たデザインが採用された。 「岡崎さんは『過去の経験だけで話をする人間にはなりたくない』って常々話されています。いつだって『最前線で自分が戦う』というスタイルなんですよね。そんな“最前線で困難に耐えながら前進し続ける強さ”と“既存の枠にとらわれない自由で唯一無二の輝き”というイメージ、さらに“無限の可能性を秘めた原石”というメッセージをダイヤモンドに紐づけてデザインしたユニフォームです。ユニフォームは手段であって目的ではない。『ブランドとしてカッコいいユニフォームを作りました』で終わりにはしたくなかった。いつも寄り添って、クラブがゴールにたどり着くためにずっとサポートし続けるような機能を持たせたかったんです」 岡崎が現役最後の試合となったシントトロイデンでの試合後に「自分の中でいろいろ葛藤がありながら進んで、自分にとっての挑戦を続けてきた。“ザ・日本人のメンタリティ”を常にもって、それがあったからこそやってこれたと思っている。これからもそういうメンタリティは大事にしたいですね」と口にしていたことを思い出す。 「スポーツ、非スポーツを問わず、挑戦する人たちを応援できるように、自分たちも挑戦し続けようというのがミズノのスローガンです。同じベクトルで戦える岡崎さんと一緒に挑戦していきたい。私は、岡崎さんがさまざまなパートナーを巻き込みながら世界挑戦のプラットフォームを作っていると解釈しています。世界で活躍する人材を輩出し続ける仕組みを作っている過程で、その一つがいまバサラマインツさんの監督としての姿なのだと思います」 未知の世界だろうと、前人未到の分野だろうと、どんな難攻不落の困難にもくじけずに、むしろ闘争心を燃やす岡崎の熱さは、世界のフィールドで戦おうとするミズノにとってこれ以上ないパートナーだった。 ビジネスとはロジックだけでも、数字だけでもはない。人と人の絆が作り出す無尽蔵の力が新たな歴史を作り出すこともあるのだ。 <了>
文=中野吉之伴