北朝鮮「最終完結版ICBM」…核武力の誇示か、それとも局面転換の予告か
労働新聞、火星砲19型について報道…「米大統領選挙以降、交渉再開に向けた布石の可能性も」 金委員長が2017年に「核武力の完成」発言した当時は南北首脳会談が実現
北朝鮮メディアが最新型「火星砲19型」の発射実験に成功したとし、1日に「最終完結版大陸間弾道ミサイル(ICBM)」だと報じた。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記兼国務委員長は10月31日、発射現場を現地指導し、「核挑発手段の開発・製作で我々が確保した覇権的地位が絶対不可逆であることを世界の前に示すことができた」と述べた。発射現場には、金総書記の娘であるジュエさんも同行した。 北朝鮮官営「労働新聞」は同日、ミサイル総局が前日に火星砲19型の発射実験に成功したというニュースを大々的に報道した。同紙は「発射されたミサイルは最大頂点高度7687.5キロメートルまで上昇し、1001.2キロメートルの距離を5156秒(85.9分)間飛行し、東海の公海上の予定目標水域に弾着した」と報道した。韓国軍合同参謀本部(合参)と日本防衛省が前日発表した推定値とほぼ同じだ。北朝鮮が公開した写真の中の火星砲19型は弾頭搭載部がかなり丸くなっており、「多弾頭」と推定されるという指摘が出たが、合参関係者は同日、「評価中」だとし、判断を留保した。 「労働新聞」の報道で最も目を引くのは、火星砲19型を「最終完結版」としたことだ。人民の士気を高めるのが狙いの大袈裟な政治宣伝かもしれないが、「より良い性能の大陸間弾道ミサイルを開発する必要がない」という意味に読みとれる余地があるためだ。 最終完結版のICBMという主張は、2017年の金総書記の「国家核武力完成宣言」を思い出させる。キム総書記は朝米の対峙で朝鮮半島の戦争危機がピークに達した2017年11月29日、ICBM「火星15型」の発射実験に成功したことを受け、「国家核武力完成の歴史的大業が実現した」と宣言した。これまでどの核保有国も行ったことのない「完成宣言」が、対峙から交渉に転じるための北朝鮮の「準備された急転換」の予告であることは、すぐに確認された。 金総書記は2018年4月20日、労働党中央委7期3次全員会議で「経済・核建設並進路線」の終了とともに、「核実験・ICBM発射モラトリアム(猶予)」を宣言した。2018~2019年に3回の南北首脳会談と2回の朝米首脳会談が続いた。だが、2019年2月ベトナムのハノイで開かれた朝米首脳会談が物別れに終わったことで、事実上「並進路線」が蘇り、2022年3月24日の「火星砲17型」の発射実験で「ICBM発射モラトリアム」の約束も破られた。ただし「核実験モラトリアム」は2017年9月の6回目の核実験以来、7年以上続いている。 元政府高官は「もう少し見守らなければならないが、米国の大統領選挙以後、新政権の発足を念頭に置いた交渉への布石かもしれない」と指摘した。ただし「『核武力強化路線はいかなる場合でも絶対に変えない』という金総書記の発言も考慮しなければならない」とし、「年末に予告された労働党中央委全員会議で金総書記がどんな話をするのかを見守る必要がある」と語った。チェ・ソンヒ北朝鮮外相は同日、ロシアのモスクワで開かれたセルゲイ・ラブロフ外相との会談で、「現在の状況と未来の脅威と挑戦が、われわれに先端戦略の攻撃用核兵器を強化し核対応態勢を改善するよう要求していると、金総書記が発言した。われわれは核戦力強化政策を変えないことを確信する」と述べた。 統一部のキム・イネ副報道官は同日の定例会見で、北朝鮮が火星砲19型の発射実験を行った理由として、米国への圧力▽ロシア派兵事案から視線を逸らすため▽年末の労働党全員会議の成果確保▽軍事技術的需要などを挙げた。 韓米政府は北朝鮮のミサイル発射が「国連安全保障理事会の決議違反」だとし、「強く糾弾」した。外交部は駐中国北朝鮮大使館所属の外交官チェ・チョルミンなど個人11人と機関4つを、国連安全保障理事会決議が禁止したミサイル開発などに関与したという理由で「独自制裁対象」に新たに指定したと発表した。 イ・ジェフン、パク・ミンヒ先任記者、チェ・ウリ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )