「トランプ政治」の方向性は? 固まりつつある政権顔ぶれ
レーガノミクスと親和性が高くなる?
第三に、財務長官のスティーブン・ムニューチン氏は元ゴールドマン・サックスの幹部、商務長官のウィルバー・ロス氏は著名投資家、国家経済会議(NEC)委員長 のゲーリー・コーン氏はゴールドマン・サックス社長と、経済・通商面ではウォール街出身者が目立つ。ロス氏はジャパン・ソサエティ(ニューヨーク)の会長を務める知日派で、9月に安倍首相が国連総会に出席した際にも面会しているが、TPPには反対している。 所得税や法人税の減税、規制緩和、軍事費やインフラ投資の拡大など、「トランプノミクス」はレーガノミクスと親和性が高いものになりそうだ。選挙期間中からトランプ氏の政策顧問団には実業家が目立ち、例えば、経済・通商関係で博士号を持つのはピーター・ナヴァロ氏のみ(カリフォルニア大学教授)だった。 逆の言い方をすると、超富裕層の存在が否応にも目につく政権でもある。トランプ氏、ムニューチン氏、ロス氏、コーン氏はもちろん、教育長官のベッツィ・デボス氏の夫はアムウェイの御曹司で、一緒に投資会社を経営。運輸長官のイレーン・チャオ氏は台湾系海運王の令嬢だ。さらに中小企業長官のリンダ・マクマホン氏はプロレス団体「WWE」の前CEOだった女性である。
反移民・反イスラム・白人至上主義
第四に、反移民的な立場の持ち主が散見される。メキシコ系やムスリムに対するトランプ氏の過激な発言はつとに有名だが、カーソン氏やフリン氏も反イスラム的な発言で批判を浴びた。ケリー氏や、司法長官に指名されたジェフ・セッションズ氏(上院議員)は不法移民の阻止に強硬な立場を取っている。セッションズ氏は白人至上主義団体との距離の近さも懸念されている。閣僚の承認には上院(100名)の過半数が必要だ。共和党は今回52議席を有しているので問題はないが、民主党は審議を長引かせるなどして抵抗するだろう。
リベラル派が最も警戒するのはスティーブン・バノン氏だ。日本的に言えば、ネット右翼の親玉的存在で、白人至上主義的色彩の濃い保守系ニュースサイト「ブライトバート・ニュース」の会長を務めた。先日は米シリアルメーカー、ケロッグが同サイトへの広告掲載を見送ったことに反発、読者にケロッグ商品の不買運動を呼びかけている。バノン氏はトランプ陣営の最高責任者を務めたが、今回、上級顧問兼首席戦略官に抜擢された。ジョージ・W・ブッシュ前政権時代のカール・ローブ氏のような存在で、参謀として、トランプ氏の再選戦略の中枢を担うことになりそうだ。