<21世紀枠候補紹介>脱「丸刈り」丹生 プロ輩出の監督はなぜ変えた? 選抜高校野球
1月28日に出場32校が決定する第94回選抜高校野球大会。「21世紀枠」の全国9地区の候補校を担当記者が紹介します。5回目は丹生(にゅう、福井)。「脱丸刈り」に込めた監督の思いに迫りました。 【プロの世界へ】21センバツを彩った選手たち ◇「野球部員は丸刈り」の刷り込み 高校球児といえば「丸刈り」が根強いが、丹生は2019年夏から髪形が自由になった。「丸刈りにしても野球はうまくならない」。「脱丸刈り」には春木竜一監督(49)のある狙いが込められている。 髪形自由化は、OBでプロ野球・広島の玉村昇悟(20)の存在がきっかけだった。玉村は高校時代、自主的に練習メニューを決めて取り組み、19年夏にエースとして丹生を県大会準優勝に導いた。「他の子にも(玉村のように)考えて練習する癖をつけてもらいたかった。髪形の自由化は自分たちで考える習慣のきっかけづくり」。春木監督は狙いを明かす。 しかし、当初は部員から「脱丸刈り」に戸惑いの声が上がった。「野球部員は丸刈り」という刷り込みがあったからだ。それでも、春木監督は思いを貫いた。「決められたことをやるのは簡単。でも、それは『やらされている』ということ。もっと選手たちから『こうしたい』という主体的な声がほしかった」 丸刈りも禁止せず、2~3割は「洗髪しやすい」などの理由で継続したが、他の選手は髪を伸ばした。エースの井上颯太(1年)は「頭も寒くないし気に入っています」と短髪にした頭をなでる。 ◇多彩なメニューから自主的に取捨選択 練習でも選手が主体的に考えるようにしている。春木監督は降雪などでグラウンドが使えない冬に、多彩な練習メニューを提示する。軽くノックした球をグラブに見立てたスリッパでキャッチして捕球感覚を養ったり、肩肘に負担が少ないフライングディスクを投げてフォームを確認したりするメニューだ。そして、春以降は1日2~3時間の練習のうち、約30分間を自主練習に割く。選手は監督から教わった多彩なメニューの中から自身で取捨選択し、弱点の補強などに取り組む。春木監督は「自分で考えて練習することで肉体的にも精神的にも成長できる」と語る。 地元の福井県越前町は若者が減り、冬は積雪など困難な環境にある。それでも、自ら考えて動く効果は徐々に表れ、21年秋の県大会は4強入り。「私立校と十分戦えた。個々が考えて成長してきた証拠」。春木監督は手応えをにじませる。 27人の選手全員が地元出身。玉村を擁した県大会決勝の時は、地元の越前町役場でパブリックビューイングが行われ、人口約2万人の町が盛り上がったという。主将の来田竹竜(たける、2年)は「甲子園で活躍すれば、地元のみんなに喜んでもらえる」。春夏通じて初の甲子園となるか。【木村敦彦】 ◇丹生 1925年創立の県立校。野球部は49年創部で、2018年の豪雪時には部員が率先して雪かきをして生活道路を確保するなど地域に貢献している。男女ホッケー部は全国レベル。 <次回は18日朝、伊吹(滋賀)を公開する予定です>