オーガニックでがん予防? 栃木・小山市の講座に疑問の声 専門家「こだわりの食生活の方がリスクを上げる可能性」 科学的に考える“食の安全”
「個人的な考えを市が主催する公共の場で伝えることに憤り」
小山市の姿勢に対して、除草などを研究してきた宇都宮大学の小笠原勝名誉教授は講座に参加したうえで「“残念”を通り越して“憤り”を感じる。個人として農薬を嫌うのは自由だが、個人的な考えを市が主催する公共の場で伝えることに憤りを感じる。“公平”は難しいが、さまざまな角度から農薬の良さ悪さに関する情報を提供するのが行政だ。本当に今日は残念だ」と懸念を表明した。
誤解を招きかねない表現は公序良俗に反している
小山市はこれまでに14回オーガニック講座を開催。その内容について市議の島朋幸議員は「市は講師の主張であれば公序良俗に反しない限りはそのまま掲載すると言っていたが、誤解を招きかねない表現は公序良俗に反している。純粋に有機農業をやっている方にとっては慣行栽培の農家との溝が深まることは本来望んでいることではない。双方に不利益があることを再認識してほしい」と指摘した。これに小山市は「講師の見解であり市の見解ではない」としている。
農薬だけがリスクなのか? 食のリスクを考える基本
食の安全の専門家はどのように考えているのか。 国立医薬品食品衛生研究所で安全情報部長を務めた畝山智香子氏は、前提として、どんな食品も“リスクゼロ”ではないことを指摘。微生物や自然毒、異物など様々なハザードがあるという。
農薬や添加物はリスクが「管理されている状態」
畝山氏は「食品にはもともとたくさんのハザードがあり、不適切に取り扱うことで食中毒になったりする。農薬や添加物は『化学的要因』に分類され、リスクが『管理されている状態』であるため、微生物など『管理されていないもの』に比べると圧倒的にリスクが低い。一方、微生物による食中毒は毎年のように起こり死亡者も出ている」と説明した。 管理が難しいものの中には、食品が天然に含む物質もある。
カドミウムを吸収しない「あきたこまちR」
コメは生育の過程で土壌中のカドミウムやヒ素を吸収してしまうが、これを完全になくすことは難しいため、国も対策に力を入れてきた。 去年注目された新品種「あきたこまちR」(2025年から切り替え)も「カドミウムを吸収しない」という特徴を持つように改良されたものだ。 食べて害があるというレベルではないが、可能な範囲で減らすべき物質とされており、リスクの観点でいえば「農薬や添加物など管理されたもののほうが小さい」という。