在職期間は全国最長の10期40年、大分・姫島村長が退任へ…父と合わせ「藤本村政」64年超
周防灘に浮かぶ大分県の離島・姫島村で、村長を10期40年務めた藤本昭夫氏(81)が25日に退任する。在職期間は現職首長として全国最長で、前村長で父の熊雄氏も合わせた「藤本村政」は64年超に及ぶ。役場の仕事を島民で分けあう村独自の施策などが評価され、任期の大半で選挙戦を経験しなかった藤本村長は「無投票もまた民意だ」と自身の政治哲学を語った。(大石健一)
ワークシェア
「あっという間という感じ。過ぎ去ったら短かった」。今月7日、村長室で読売新聞の取材に応じた藤本村長が振り返った。
国東半島の北約5キロ・メートルに浮かぶ姫島では約7平方キロ・メートルに約1700人が暮らす。名産の車エビ養殖に代表される水産業が主要産業で、佐藤栄作と田中角栄の両元首相らを支えた西村英一・元自民党副総裁を生んだ地としても知られる。
藤本村長が、車エビ養殖会社の役員から村のかじ取り役に転じたのは1984年。村長だった父が7期目の途中で急逝したためだ。
力を入れた施策の一つが、職員の給与を引き下げる代わりに人数を増やすこと。現在の職員数は202人で、村民のおよそ9人に1人が「役人」となる計算だ。雇用の場が限られる島で多くの人が生きるための知恵は、「ワークシェアリング」のさきがけにもなった。
合併離脱
国東町など4町(現・国東市)との「平成の大合併」協議では、職員のリストラ策を巡って折り合わず、「働く場の維持は多くの村民の願いだ」と離脱を決断した。村の人口は就任時の約3200人からほぼ半減したが、「同規模だったほかの離島は500人くらいになった」と強調し、村の独立を守ったことに誇りもにじませる。
公共下水道の普及にも努め、98年には整備率100%を達成。電気と水道の敷設に尽くした前村長の業績に触れつつ、「父が『光』と『水』で、私が下水道」と述べ、父子2代で紡いだ行政運営の成果を挙げる。
村二分避け
藤本村政を支持する島民は多く、7期すべてで無投票だった父に続き、自身も10期中8期で対抗馬が現れなかった。全国町村長会などによると、11期務めた山梨県早川町長(84)が今月15日に引退したことで、藤本村長は任期満了日までの10日間だけ、在任期間が全国トップになるという。