富士山遭難が大幅増加 、昨年は世界遺産登録の年に次ぐ104件
山梨県知事が登山条例の制定検討を表明
こうした遭難実態を受けて、富士吉田市など富士北麓の市町村は昨年9月、富士山の冬季入山に関し、登山計画書の提出義務化や条例による入山禁止を求めた要望書を後藤斎・山梨県知事に提出。後藤知事は今年2月、定例県議会で登山条例の制定を検討することを明らかにした。 富士山にとどまらず、登山ブームを反映して国内での山岳遭難は増加しており、警察庁によれば2015(平成27)年に国内で起きた山岳遭難は前年比215件増の2508件、遭難者数3043人うち死者・行方不明者は335人だった。これら数値はいずれも山岳遭難の統計が残る昭和36年以降もっとも高い数値だという。背景に、団体に所属しない個人が十分な登山の知識や装備をもたないまま入山している実態があるようだ。
日本山岳会では「講習会等を行う際は、未入会の登山者も参加できるようホームページなどで広く呼び掛けて実施している。また、その後のフォローとして山岳会への入会を勧めている。安全登山に向けた取り組みを強化していきたい」としている。 一方、自治体では登山計画書の提出義務化などを規定した登山条例の制定が相次いでおり、直近では2014(平成26)年に岐阜県が北アルプス登山を対象に登山計画書の届出を義務化する条例を制定。同年には御嶽山で噴火が起き多くの犠牲者が出たことから、同県は2015(平成27)年4月から御嶽山などの活火山の登山についても条例に追加した。 2015年には長野県も条例を制定、遭難の恐れのある県内すべての山を対象に、登山計画書の提出を義務化するとともに登山のルールを条例として示した。昨年12月には岐阜県が石川県境の白山を条例に追加、これを受けて石川県も白山を対象とする登山条例を制定した。そして、今年2月に山梨県知事が登山条例の制定検討を表明、罰則規定についても検討するとみられている。 これまでの条例には罰則規定はもうけられてこなかったが、岐阜県が昨年12月に罰則を規定。白山を除く対象山岳への登山で、登山計画書を提出しなかったり、虚偽の計画書を提出した場合は5万円以下の罰金を科すことにしており、他自治体の今後の対応が注目される。