<高校野球>伝統校躍進、地域の希望 徳島・富岡西 センバツ21世紀枠候補
3月23日に兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕する第91回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)の出場32校が今月25日、選考委員会で決まる。そのうちの3校は、困難条件克服や地域貢献など他校の模範となるべき要素を選考条件に加えた「21世紀枠」で選ばれる。 【写真で振り返る歴代出場校】 ◇地元自治体に「野球のまち推進課」 徳島県南部の高校球界を支える存在――。それが徳島市の南約20キロの阿南市にある富岡西だ。1964年センバツで初出場初優勝した徳島海南(海陽町)は2004年に近隣2校と統合され、96年夏の甲子園に初出場で2勝して「ミラクル新野」と呼ばれた新野(同市)も統廃合により今春閉校。県南部から甲子園出場校が統廃合されていく中、春季県大会3回優勝などの実績を持つ1896年創立の伝統校が地域の大きな期待を背負う。 過疎化の進む同市は野球を大きな観光事業と位置づけ、10年に「野球のまち推進課」を設置。北信越のセンバツ出場校の合宿受け入れ、還暦野球大会など野球関連で年間約1万1000人が訪れる。 強豪校の来訪は同校の強化につながる。17年夏、15年センバツ覇者の敦賀気比(福井)との練習試合では、1年生エースだった浮橋幸太(2年)が完投してサヨナラ3ランを放ち、「勝てないと思っていた相手を抑え、自信になった」と振り返る。その言葉を裏付けるように、チームは昨夏の徳島大会で準決勝に進み、昨秋の四国大会では1回戦で昨春センバツ出場の高知を破るなど初めて4強に入った。 近年の成長を促しているのが「ノーサイン野球」。小川浩監督(57)が5、6年前に「地方の公立校が強豪私立に勝つため」と取り入れた。平日の練習は1時間半しかなく、グラウンドもサッカー部などと共用といったハンディキャップを埋めるため、選手自身で考える癖を付けさせた。練習も工夫し、守備練習では一球でも多く捕球できるように、シートノックではなく、選手が5列に並んでゴロを処理するやり方で行うことが多い。打撃練習では近くに他部の生徒がいるため、フライやライナーを打つのは禁止されているが、おかげで試合で不用意なフライを打たなくなり、坂本賢哉主将(2年)は「悪いことばかりではない」と強調する。 21世紀枠の候補校選出は01、08年に続き3回目。「三度目の正直」となる春の知らせを、地域をあげて待っている。【丹下友紀子】