和田秀樹×オリックス宮内「若い人を大事にする人の方が元気で長生きする」【対談連載⑤】
全部がすごい人はいない
和田 ところで、宮内さんには「この人は魅力的だな」とか「見習いたいな」などと思う人はいますか? 宮内 いやあ…。例えば「松下幸之助は経営の神様」と言われますが、私は神様だと思ったことはありません。もちろん松下幸之助さんは優れた経営者で、ある時はグレートだったと思うんです。でも、そうでないときもある。どんな経営者もそうですよ。ですから一生この人の全部がすごいな、という方は思いつきません。 和田 さすがですね。日本人の多くは、ある人の信者になっちゃうと、なんでもかんでもよく見えて、悪い所が見えなくなってしまいます。 宮内 初めから終わりまですごいというのは、やっぱりこれは神様でしょうな(笑)。 和田 その通りだと思います。 宮内 人間っていうのは、そうはいかんですね。
教育が大事
和田 宮内さんは、多方面から社会貢献もされています。どんな思いがあるのですか? 宮内 そんな立派なことはやってませんけれど。何かお役に立つことをしたいとずっと思っていて、財団も創設しました。今は教育関係への思いが強いですね。学生から「講義に来てほしい」と頼まれたら行くとか、そういう協力をさせていただいてます。役に立ってるのかは、よくわからないですけど(笑)。やはりまずは教育だと思うんです。 和田 同感です。日本の教育について、世間的には「受験勉強が悪い」と言われています。だけど僕は、大学に入ってからや社会人になってからの教育がボロボロだと思うんです。 宮内 そう思います。私も大昔に留学経験をしましたが、例えば学業成績が悪いと留年では なく放校。ですから卒業生は品質保証があるのです。これは医師免許と同じ。しかし日本では入学時の学業のみが社会に通用する不思議な制度なのです。 和田 僕は医者なので、一番気になるのは医学教育です。例えば「医学部に秀才ばかり入ってきてつまらん」という批判もありますが、それよりも医学部に入ってからの教育が問題です。 宮内 興味深いですね。 和田 僕はアメリカで「精神医学校」という精神科医の養成学校に行きました。そこで「アメリカの教官って教えるのがうまいな」と実感したんです。ディスカッション形式で反論させたり、いろいろな職種の人と話をさせたりして、視野や思考の幅を広げてくれるんです。 宮内 知識偏重ではない。 和田 はい。日本だと教授の知ってることだけを教える。 宮内 なるほど。