和田秀樹×オリックス宮内「若い人を大事にする人の方が元気で長生きする」【対談連載⑤】
和田 例えば、今の診断基準が未来永劫続くわけがないのに、ずっとそこに留まっている。その結果「血圧高けりゃ○○剤」とか「血糖値高けりゃ○○薬」という“モグラ叩き”のような医療になる。ちょっと考えれば「薬の数が増えたら副作用も増えるはず」とかわかるのに改めようとしない。 宮内 停滞してしまいますね。 和田 はい。これは「医学は進歩している」とか「進歩するものだ」という前提で教えてないからです。 宮内 なるほど。 和田 100歳以上の人を調べた実態研究があるんですね。この調査では「血圧は高めの人のほうが長生きしている」という事実がわかりました。しかし医師たちは、それを一切無視して一律に降圧剤を処方しています。 宮内 変えようとしない。 和田 はい。本来、教育は、理論半分、実践半分ぐらいでちょうどいい。だけど、日本では理論が9割です。医学はとくにそうで、教授の教えが絶対です。 宮内 そうかもしれませんね。 和田 だから宮内さんのように、自ら実践した経験を教えられる人は貴重だと思います。養老孟司先生は「世の中、理屈どおりじゃないからね」と口癖のようにおっしゃいますが、大学の先生にこそ聞いてほしいですね。 宮内 私も大学教育が問題だと思ってるんですよ。日本の大学は、先生のための大学になってしまっています。18歳から22歳の若者が大学でどう過ごすかは社会の将来を決めます。今のように楽しく多岐にわたる活動をしながらそこそこ学ぶということでは将来が暗い。世界の多くの若者は、もっと必死に学業中心に生活しているのです。 和田 本当にその通りです。 宮内 なんとか日本の大学を変えたいなと思って、いろいろ運動してるんですけど、全然変わりません。 和田 どんな世界でも、既得権があると、変わってくれないんですよね。 ※6回目に続く 和田秀樹/Hideki Wada 精神科医。1960年大阪市生まれ。東京大学医学部卒業。現在、立命館大学生命科学部特任教授、和田秀樹こころと体のクリニック院長。老年医学の現場に携わるとともに、大学受験のオーソリティとしても知られる。『80歳の壁』『70歳の正解』など著書多数。 宮内義彦/Yoshihiko Miyauchi オリックス シニア・チェアマン。1935年兵庫県生まれ。1960年ワシントン大学経営学部大学院でMBA取得後、日綿実業(現・双日)を経て、1964年オリエント・リース(現・オリックス)入社。社長・グループCEO、会長・グループCEOを経て現職に。著書は『諦めないオーナー』など多数。
TEXT=山城稔