「フェティコ」意外性で開く新境地 緊張感を解いた先の“愛らしさ”
小物使いも新鮮だった。特に、スクエアトーのベルクロストラップのスニーカーは、自然体なスタイルを完成させた。舟山デザイナーは、「『フェティコ』は女性らしいハイヒールを合わせてもかっこいいが、私自身はスニーカーをよく履く人間。コレクションでリアルな女性像を表現するにあたり、あえて外しアイテムとしてスニーカーを選んだ」と話す。また、「ブラン(BLANC)」とコラボした幅太メガネを着用したモデルも現れ、フェミニンなスタイルに意外性を加えた。
曖昧さを許容し、クリエイションは次のステージへ
舟山デザイナーはこれまでコレクションを通して、女性のユニークな美しさを讃えつつ、自由に生きる女性をエンパワメントしてきた。そして今、舟山デザイナーはその先を目指そうとしているのだろう。“強くいなくては”と鎧(よろい)をまとって社会で闘う女性が、自分の繊細でかわいらしい一面も肯定したかのように、今季の「フェティコ」は愛らしさに溢れていた。
もしかすると、「フェティコ」の“強さ”を期待していた女性にとっては物足りなかったかもしれない。しかし、パワフルでソフトな今回のコレクションは、ファンの裾野が広がりそうな期待感もある。ショー後の舟山デザイナーは「何でも白黒はっきりつけるのではなく、曖昧さを許容できるようになった自分がいる。とはいえ、次はまたバッキバキに強いコレクションを作る可能性もあるし、先はまだ見えない」とほほ笑んだ。等身大の女性を描く、「フェティコ」の新章が始まった。