万感ラスト采配。掛布2軍監督の自己採点「31点」の美学と苦悩と育成流儀
阪神ー広島のウエスタンリーグの最終戦が28日、甲子園球場で行われ、阪神が16-4で圧勝した。この試合限りでユニホームを脱ぐ掛布雅之2軍監督(62)は、ラストゲームで有終の美を飾った。先発の藤浪晋太郎が、最速155キロをマークする5回4安打1失点(自責ゼロ)の力投を見せると、打線も広島の先発・加藤拓也の制球の乱れにつけこんでロジャースの走者一掃の三塁打などで3回までに9点を奪い主導権を握り、13安打で今季最多の16得点。掛布2軍監督の最後のタクトに華を添えた。 全員でマウンド上に横一列に並びファンへ挨拶すると掛布2軍監督は一人ひとりと握手をした。 「2年間、やったことを色々と思い出しながら握手をさせてもらった」 そのままベンチへ引き上げようとすると、望月と今成が、掛布2軍監督を追いかけて胴上げに誘った。だが、掛布2軍監督は、笑顔で拒否した。ベンチ内にまで2人が追いかけて説得が続く。7138人で埋まった甲子園球場のファンがざわめいた。そして、小波のように広がっていく掛布コール。掛布2軍監督は、それでも胴上げに応じることはなかった。 「胴上げは、セ・パの優勝監督がされるというのが美学。選手が引退するときとね。私は、もう現役時代の引退でベンチ前でチームメイトにされた。それでいい。胴上げは勝者がするもの。私は去っていく人間ですから。照れじゃなく最後のお別れはいい。選手の気持ちには感謝しているが、申し訳ないが足を運ぶことはできなかった」 前日、狩野が胴上げで見送りたい意向を伝えてきたが、「しなくていいから。気にしなくていいから」と、断っていた。それがミスタータイガースと呼ばれた男の美学だった。 この2年間で、掛布チルドレンと呼ばれた多くの若手を1軍に送りだした。 振り返り、思い出のシーンを聞かれ、狩野の巨人戦での本塁打、育成から緊急1軍選手契約をした原口のサヨナラヒット、高山のルーキーイヤーの安芸キャンプでのランチ特打を挙げた。 ベテランの再生、チャンスのなかった若手の掘り起こし、そして、ドラフトの宝の育成。掛布2軍監督の2年間の軌跡を象徴するようなシーンでもあった。 「狩野が巨人戦で、1本塁打を含む3安打の活躍をしたとき、狩野が『掛布さんに恥をかかせられない。絶対に打ってくる』と、そう言ってくれた1本と、原口だね。育成の3桁の背番号で一人で黙々とバットを振り、いろんなことを聞いてきた原口が、ユニホームが間に合わずに山田コーチの背番号をつけて、この(甲子園の)右打席でサヨナラヒットを打った試合は、忘れられない。高山にしても、手の手術の影響があってファームキャンプのスタートだった。初めて安芸のメイングラウンドでランチ特打させたときの、そのバッティングは、目をつぶると思い出すくらいに衝撃のバッティング。強烈に印象に残っている」