（写真：Ronnie Chua/Shutterstock）

　終戦とともに韓国が日本の植民地支配から脱した1945年8月15日は、韓国人にとって闇から光を取り戻した「光復日」である。そのため毎年この時期は韓国人の反日感情が最高潮に達する。 【写真】6月1日、SSGランダースへの移籍後初先発の試合で勝利投手となった白川恵翔。仲間から手荒い祝福を受け、笑顔を弾けさせた 　今年も例外ではなく、ネットを中心に「反日狂風」が吹き荒れている。特に今年の反日狂風の的となったのは、現在韓国プロ野球リーグの先頭グループを走っている斗山ベアーズだった。 ■　8月15日にスタジアムに日の丸が揚がるのか 　ソウルを本拠地とするプロ野球チームの斗山ベアーズは、1982年の創立以来、韓国プロリーグを6回も制覇した伝統球団で、野球好きの尹錫悦大統領が応援してきたチームとしても有名だ。14日、斗山が先発投手としてMLBミネソタ・ツインズ傘下の3Aチーム、セントポール・セインツ出身のジョーダン・バラゾビックの起用を予告すると、サポーターから一気に懸念の声が殺到した。 　ただしこれは、バラゾビックの先発に対する憂慮ではなく、ローテーションの順番上、15日に日本出身の白川恵翔投手が先発登板する可能性が高くなったことに対する不満からだった。 　光復節に日本人選手が韓国プロ野球の聖地である蚕室（チャムシル）球場のマウンドに立つ姿を見ることができないとサポーターは主張した。また彼らは、蚕室球場にかかっている日の丸を下ろすべきだとも主張した。斗山ベアーズは試合日に、チームの外国人選手たちの国旗を球場にかける慣例があり、光復節にもホーム球場の蚕室球場には 星条旗やカナダ国旗とともに日の丸がかかる予定だった。

　斗山サポーターは球団の公式インスタグラムに糾弾コメントを書きまくった。 　「実力は別として光復節に日本人が先発なんてありえない」 「配慮があれば光復節に白川は起用しないだろうが」 「白川が何か悪いことをしたわけではないが、国民感情上ありえないし」 「光復節には日の丸も日本選手も見たくない」 　などのコメントがあふれた。 ■　独立リーグから期限付き移籍 　徳島県出身の白川恵翔選手（23歳）は2019年、日本プロ野球のドラフトで指名漏れした後、2020年から日本の独立リーグ・四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックスで活躍していた。転機が訪れたのは24年5月。韓国プロ野球チーム「SSGランダース」と6週間の臨時代替選手契約を結んで韓国プロ野球に進出したのである。SSGの外国人投手ロエニス・エリアスが肩の負傷で長期の離脱が予想されたため、その穴を埋めるべく結ばれた契約だった。 　韓国プロ野球協会（KBO）は今年から既存の外国人選手が6週間以上治療が必要な怪我をした場合、当該選手をリハビリ選手リストに登載し、その選手が復帰するまで代替外国人選手を出場できるようにする新しい制度を導入したが、この代替外国人選手制度を初めて適用されたのが白川だった。 　SSGは白川について「打者にとっては難しい投球テンポを持っており、最高時速150キロの速球と、スライダー、カーブ、チェンジアップなど変化球の安定した制球力を武器に試合作りにも長けている」と迎え入れ理由を明らかにした。高校卒業時にNPB進出に失敗している白川も「プロリーグで野球をする機会が開かれ非常に光栄」とし「韓国でも自分の長所を発揮してチーム勝利に寄与できるよう最善を尽くす」と抱負を述べた。