運動性能と居住性と安全性 「規格」内でもがく軽自動車のジレンマ
しかし、顧客はわがままな要求をするものだ。規制も悪くない、メーカーも悪くない、そして顧客も悪くない。犯人探しで決着しないのが今の軽自動車を巡る状況なのだ。 仮にAセグメントに合わせて幅を広げれば、安全性を含めたクルマとしての性能はずっと向上できる。特に走行性能に関しては、軽に厳しいことを言うのはピント外れだという意見もあるだろうが、必ずしも運転の上手でない人が乗る可能性の高い軽だからこそ、基礎的な走行性能は重要だ。 別にスポーツ走行をする時だけ走行性能が利するわけではない。安全性と運転のしやすさは重要だ。でもそれでは入れない狭い場所がある。全幅規制を広げるのも維持するのも共に正義だ。ここも出口はない。あちらを立てればこちらが立たない世界が軽自動車の世界だ。狭い所に入れなくていいのか、多少の安全と性能ダウンは諦めるのか、居住性と積載性を諦めるのか、3つの要素のどれも諦められない以上、一般的な答えはそこから導き出せない。 ただし、ユーザーのひとりとしては、どれかを捨てるという出口の見つけようはあると思う。例えば、数値の優れたコペンは、運転のしやすさという見地からみれば移動の道具としても優れた選択肢だと言えるのである。4人乗車と荷物のことを諦めさえすれば。がんじがらめの軽自動車の現況において、どういう出口を見つけるかは非常に難しい問題なのだ。 (池田直渡・モータージャーナル)