運動性能と居住性と安全性 「規格」内でもがく軽自動車のジレンマ
ここからが本命だ。第3グループはスイフトやフィアット500、パンダ、ブーンなどで構成されるコンパクトカーのクラスだ。表組みの中にでてくるAセグメントとは国際的に見て最少のクラスで、ちょっと乱暴に言えば外国の軽自動車だ。 Bセグメントとはヴィッツやフィットなどの日本人にも馴染みのある普通車のコンパクトカーだ。BとAの中間に位置するクルマはサブBと呼ぶ。 数値を見て見事なのは、スイフト、フィアット500、パンダと1.63で並ぶ3台。比率だけでなくホイールベースとトレッドのデータを理想値と比べるとスイフトは本当に惚れ惚れする。スイフトは走りの良さで定評があるが、こういうデータで見ても基本に忠実に作られていることがわかる。とは言えこのクラスは基本的に全車優秀で、Bセグメントで一番数値の大きいアクアでも1.72。概ね1.7のラインにいると考えられるだろう。
突出して数値が高い軽自動車
では軽自動車はどうかというと、主要モデル中で一番数値が小さいものでもアルトの1.85で、一番大きいのは1.93のホンダのNシリーズ3台だ。飛びぬけているのがはっきりとわかる。法で定められた外寸の範囲でできる限りの居住性を得ようと思うと、タイヤを外に押し出さざるを得ず、前後に対して左右が厳しい規制値である以上、縦横比が大きくなるのはやむを得ない。 例外的に軽自動車の中では居住性を求めない2座のコペンは流石で、その縦横比は1.70と軽としては群を抜いており、厳しい全幅規制の中にありながらトヨタ86の1.67に肉薄する勢いだ。この数値を見てもダイハツの主張する通りコペンはスポーツカーだと言えると思う。ホンダの3台については正直言及するに忍びない。
「すべて」を叶えれば中途半端に
さて、こうして眺めてみると表の最下部に軽自動車が集まってしまっているのが解るだろう。対比して外国の軽自動車であるAセグメントには理想的グループに入っているモデルもある。道路の現状や法規制の話に耳を塞いでエンジニアリング面からみるとこの表でそれぞれの立ち位置がわかるのだ。 しかし、耳を塞いでいないでちゃんと耳を澄ませば、エンジニアリング的正義が正解そのものではないことは誰でも解る。 初めにまず規制がある。日本の地方の道路事情に鑑みれば、この全幅規制は故ないものではない。なのでその与えられた条件の中でエンジニアは頑張る。技術でいくら頑張っても物理的な特性を超越できるわけではないのに、われわれ顧客が「4人が広々乗れるようにしろ」「自転車が載らないと困る」と贅沢を言うのである。 「全幅制限の中でどうしろと」「そんなことをしたら重心が上がって余計性能が悪くなる」エンジニアは言いたいことが沢山あるだろうが、それらをグッとこらえて飲み込んで、法律と顧客から与えられた苦難の連立方程式を必死に解いた結果が今の日本の軽自動車なのだ。