結党60年、岐路に立つ公明 前途多難の斉藤体制【解説委員室から】
理由の第一は、学会の集票力の低下。先の衆院選での比例の得票は過去最低の約596万票。前回21年と比べ約115万票減らした。今回同様、自民党と共に逆風にさらされた09年ですら、約805万票を確保している。 一方、前回22年参院選の比例票は約618万票で、前々回と比べ35万票超のマイナス。獲得議席も1減の6議席にとどまった。票の落ち込みに歯止めがかからない状況だ。原因として、会員の高齢化による運動量の低下が指摘されており、改善は容易でない。 第二は、少数与党になったことに伴う、存在感の低下だ。公明党は、選挙協力で自民党候補に提供する「票」をバックに、独自の主張を予算案や法案に反映させることで、存在感をアピール。選挙になると、学会員がこうした「実績」や新たな目玉政策を、会員以外にも説明して回り、支持拡大を図ってきた。 しかし、少数与党になったことで、自公両党で合意しても、野党の協力なしには予算案や法案は成立しない。当然、常に野党に譲歩を強いられ、結果として、政権内での公明党の影響力低下は避けられない。 衆院選の結果、キャスチングボートを握ったのは、国民民主党。同党は、所得税がかかる下限の「103万円」の「178万円」への引き上げや、ガソリン税を引き下げる「トリガー条項」の凍結解除などを求め、自公両党との協議が始まっている。予算成立のためには、要求のかなりをのまざるを得ず、当面は国民民主に注目が集まるだろう。 第三は、衆院選で自民党が公認を見送った裏金議員を推薦したことなどによる、「クリーンな党」という看板の毀損(きそん)だ。選挙協力で見込める「票」を優先したとみられ、参院選や都議選で「政治改革の先頭に立つ」と訴えても、支持者以外の共感を得るのは難しいだろう。いわば「自民党と同じ穴のムジナ」。両選挙でも自民党への逆風が吹けば、公明党も同じ風にさらされるのは間違いない。 ◇いきなり「背水の陣」 このほか、衆院選で落選した石井啓一前代表の後任選びで、世代交代に逆行する人事を行った結果、両選挙で「刷新」をアピールすることもできない。まさに、不安材料だらけの中で、齊藤代表は初めて選挙の陣頭指揮を執る。いきなりの「背水の陣」だ。 残された時間は7~8カ月。この間に、どう党勢を回復し、勝利につなげるのか? 斉藤氏は、自身が代表に指名された理由である「経験」「与野党での人脈」「行動力」を駆使して、有権者から評価される「成果」を挙げることを求められている。 高橋 正光(たかはし・まさみつ)1986年4月時事通信社入社。政治部首相番、自民党小渕派担当、梶山静六官房長官番、公明党担当、外務省、与党、首相官邸各クラブキャップ、政治部次長、政治部長、編集局長などを経て、2021年6月から現職。公明党担当として、連立政権の発足を取材。