石破新政権の人事案:刷新感よりも安定感重視か:経済政策は岸田路線継承とアベノミクス脱却のパッケージ
石破政権の経済政策は岸田路線継承とアベノミクス脱却のパッケージ
石破氏は28日の総裁選後の記者会見で、経済政策では岸田路線を継承する考えを表明した。賃上げ、物価高対策などを主に念頭に置いているとみられるが、バラマキ的な政策に陥らないかどうかは今後注目される点だ。また、労働市場改革、資産運用立国実現プランといった岸田政権の成長戦略も継承する考えだろう。これに地方創生を軸に据えた成長戦略で、石破新政権は独自色を加えるのではないか。 他方で石破氏は、アベノミクスの功罪を検証すべきとしてきた。アベノミクスの第1の矢である金融緩和、第2の矢である積極財政には否定的と考えられる。石破氏の経済政策は岸田路線の継承とアベノミクスからの脱却のパッケージと理解できるのではないか。 こうした経済政策の実効性を考えるうえで、閣僚人事は重要となる。成長戦略を担うのは、金融担当大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣、地方創生担当大臣などだ。他方、アベノミクスの第1の矢、第2の矢の修正に関わるのは、金融担当大臣、財務大臣である。
財務大臣に加藤氏との観測も
財務大臣には、総裁選候補となった旧茂木派の加藤元官房長官が起用される見込みだ。加藤氏は総裁選挙中に、「自身にはアベノミクスの精神が流れている」と発言していた。さらに積極財政姿勢も見せていた。総裁選挙候補者を登用して党の結束を図る狙いが石破氏にあるとしても、アベノミクス支持を公言していた加藤氏を財務大臣という最重要ポストに据える場合、アベノミクスの見直し、財政健全化を主張してきた石破氏の姿勢を踏まえると意外感がある。 ただし、加藤氏は旧安倍派ではなく、全体的に保守色は強くないことや、総裁選では第1回投票で最下位であり、党内での影響力が必ずしも大きくないことにも配慮して登用したことも考えられる。いずれにせよ、財政政策を巡って首相と財務大臣の間に何らかの軋轢が生じるかどうかは、今後の注目点の一つだ。 仮に現在と同様に、財務大臣が金融担当大臣を兼務する場合には、このポストは日本銀行の金融政策とも関わってくるが、加藤氏は、石破氏と同様に日本銀行の金融政策正常化、利上げは支持する立場と考えられ、両者の間に大きな違いはないだろう。 利上げに否定的なのは、総裁選候補者の中では高市氏であり、その他は旧安倍派の一部だろう。石破政権は、財政規律の回復と、物価高圧力を高める円安を抑制する観点から、金融緩和状態はなお維持しつつも、金融政策の正常化、追加利上げを進める日本銀行の方針を支持する姿勢である。