“義足レスラー”谷津嘉章「パリ五輪レスリングは間違いなく6個金メダル取ります」【週刊プロレス】
7月14日、大阪・豊中市の176BOXで開催された「闘宝伝承2024」で谷津嘉章がエキシビションながら義足を装着せず、レスリングの試合に出場した。 【写真】片足でレスリングの試合に臨んだ谷津嘉章
2019年6月、糖尿病の影響から壊死が進み、右ヒザから下を切断。2021年3月には義足で東京五輪の聖火リレーに参加し、同年6月にはプロレスラーとしてリング復帰を果たしているが、昨年3月に障がい者レスリング連盟を発足。同年7月には健常者の大会である日本社会人選手権に出場している。 谷津は松葉杖をつきながらリングに向かう。片足立ちでコーナーを背に立つ谷津に対し、対戦相手の武士正がパーテレポジションで向かい合ったが、谷津はハンディはいらないとばかり立つように促した。 試合開始のゴングが鳴らされると、谷津は1歩踏み出して両ヒザ立ちの姿勢になり、武士正と組み合う。グラウンドでフロント・ネックロックの体勢にとらえられローリングを許すシーンこそあったものの、谷津もうつ伏せの相手の体を返してフォールを狙うなど積極的に攻めていった。 結果は2分を闘い抜き、ルール(エキシビションのためポイントによる決着なし)により勝敗はつかず。試合後にはおそらく障がい者がレスリングに取り組む姿は初めて見たであろう観戦者にあいさつした。 「私がですね、今やったのはレスリングです。レスリングっていうのはポイントで勝つか、あとはフォールです。プロレスの場合(フォールは)、ワン・ツー・スリーですけど、レスリングの場合は1秒(マットに相手の両肩を着ければ決まります)」と伝えた後、ポイント制とテクニカルフォールでの決着を説明。 そして、「今年はパリ五輪(が開催される年)です。レスリングは間違いなく6個金メダル取ります。うまくいけば7個。ロシアが出ないから、その分、金メダルを獲れるんじゃないかと。(日本代表は)必ずやりますから。今、谷津が言ったことを皆さんがオリンピックで検証してください。谷津が言う通りになったなって」とパリ五輪をPR。 「私の場合は(右)足がないから、(出場するとなると)パラリンピックなんですね。だけどパラリンピックにはレスリングの種目はないんですね。柔道では視覚障がい者は認められてるんですね。でも柔道は足技とか腕(をつかんでの投げ)とかあるんで、自分らのような障がい者(を対象にするの)は難しい。レスリングの場合は四つん這いになって攻めていくので、もっともっと(障がい者にも)道は開けていく。そこで谷津が、こういうふう(右足切断)になってから世界で初めてのNPO法人(日本障がい者レスリング協会=NCWA)を創ったんですね。でもまだ理解者が全然足りない。1人でも2人でも見に来ていただいて、4年後のボストン五輪は無理だと思いますけど、その次。いま私は68(歳)ですが、(次の次の五輪が開催される)76の時にパラリンピックでチャンピオンになればですね、自分の使命は一つのピリオドを打った感じになると思います。(NCWAを)創ってまだ2年目なんですね。世界選手権もやってない状態で、まだまだ認知されてないけど、絶対にパラリンピックの種目になると思って。今はプロレスをやってますけど、それは自分がやってる障がい者レスリングの啓発の場なんですね」と、自身が2年前に発足した障がい者レスリングを紹介。「こういう場を与えてくださって感謝します」と続けてリングを下りた。 80年、モスクワ五輪では金メダル確実といわれながら日本が参加をボイコット。プロ転向後の1986年には、全日本選手権に挑戦して優勝。「三十路の青春」と話題になったものの、88年のソウル五輪においてプロ解禁には至らず、“幻の金メダリスト”となったままである。 障がいの程度などによるルールの整備など問題点は多いが、日本レスリング界重量級史上最強選手はいまもなお青春の炎を燃やしている。 橋爪哲也
週刊プロレス編集部