どんぶりに小宇宙を見出す福丼県、県民主導で拡大中
どんぶりを通じて福井県の魅力に触れてもらおうという「福丼(どん)県プロジェクト」が発足して、はや一か月。うどん県こと香川県と比較されることもあるが、福丼県は行政予算なしで進行中。どんぶりを提供する飲食店なども順調に増え、拡大している。
福丼県プロジェクト事始め
福井県でどんぶりと言えば「ソースカツ丼」だ。食堂でかつ丼を注文すると、玉子でとじられたカツ丼は出てこない。カツレツへの支出が日本で最も多いのが福井市(総務省家計調査)。特にソースカツ丼を提供する同市内の「ヨーロッパ軒総本店」は県内外に知れ渡る有名店で、行列ができるほど。福井県民にとってのソウルフードと言っていいかもしれない。 今年2月ごろ、「福井の井の字に点を打ったら、丼の字になる」と気づいたのが、一般社団法人「全国丼連盟」の福井県民メンバーら。ちょっとした洒落をきっかけに、「どんぶりを全国に売り込めるのでは?」と5月に活動を開始。福井市内の洋食店「グリルあまから」でステーキ丼を提供し、福丼県プロジェクト実行委員長も務める野坂昌之さん(51)らが話を進めた。
県内の飲食店に協力を呼びかけた。福井商工会議所にかけあったことがきっかけで、トヨタ自動車から協賛金の提供を受け、県庁にもプレゼンに出向いた。話はトントン拍子に進んだ。西川一誠・福井県知事と福井市出身のタレント鹿沼憂妃さんにイベント出演の了承もとりつけた。 イベント発表のターゲットに選んだ日は9月29日。この日、西川知事は県庁前で「福井県」の井の字に点をうち、「福丼県」の字にしてプロジェクトの発足を祝福した。県内はもちろん、愛知県からもテレビ局が駆けつけた。構想からわずか4か月だった。「なぜこの日を選んだのか?」と野坂さんに聞くと、「空腹」の読みとの語呂合わせだった……。
どんぶりは小宇宙
「どんぶりというのは、元気でないと食べられませんからね。元気の象徴であり、日本のファストフードの原点です」と野坂さん。このプロジェクトに携わっているメンバーも元気だ。地元民放の福井テレビは事務局をかって出て、「福丼TV」という番組を県内で放送。東京都内に住む同県出身者らも県人会で精力的にPRする。メンバーらが自治体に営業に赴き、市長らのプロジェクトに対する賛同ならぬ“賛丼”をとりつけると、地元紙が“賛丼”を見出しにとって記事にする。