倒産件数が「11年ぶりの1万件突破」濃厚に!今年下期の倒産で「話題の8社」とは?【帝国データバンクが解説】
●医療法人社団美実会・一般社団法人八桜会(東京) 両法人ともに医療レーザー脱毛などを行う「アリシアクリニック」の運営を手がけ、施設数は全国に合わせて43施設。また、両法人はもともと美容脱毛サロン「銀座カラー」を運営していたエム・シーネットワークスジャパンのグループ法人として稼働していたが、23年11月頃に同グループを離脱していた。近時は新規顧客が減少するなかで社会保険料の差し押さえ予告が来たことで事業継続を断念。12月10日付で自己破産を申請し、同日付で全店舗を閉鎖、約1500人の従業員は解雇された。 負債は2法人合計で債権者約9万1818人に対し約124億7133万円。脱毛クリニックとして過去最大規模の消費者被害となった。被害者の多くは学生や社会人なりたての若い女性。きっと読者の周りにも被害者がいるはずだ。年末年始のイベントを控えて申し込んでいた女性は多かったはず。ローンを組んで一括払いした金銭が返ってくる可能性はほぼゼロに近い。倒産は身近な問題なのだ。 ● M&Aトラブルが社会問題化 一部では反社会勢力の影も 2024年はM&Aトラブルが社会問題になった。経営者の高齢化が深刻になるなか、手がける事業を誰かに託したいと考える経営者が増えて活況を呈しているM&A業界だが、一部では買い手企業の背後に広義の反社会性力が存在し、買った会社の資金を吸い上げて音信不通になるケースなどがあった。 帝国データバンクでも怪しい買い手企業に取材を試みたが、悪びれることなく取材に応じるケース、逃げてしまい行方がつかめないケース、倒産してしまったケースなどさまざまだ。 悪意の買い手企業を排除することが重要だが、そうした輩はこれからもかたちを変えて存在し続けるだろう。となると、今後被害を出さないために注力すべきは、買い手企業に対する十分な事前調査と現場担当者の目利き力向上に尽きる。ご意見番となる豊富な現場経験をもつ人材登用も必要だろう。 2025年は倒産予備軍がさらに増え、倒産件数は2024年を上回ると考える金融機関の審査担当者は少なくない。また、現時点で潜在化している粉飾決算や架空取引が表面化することで想定外の焦げ付きが発生して被害を受ける連鎖倒産も増えるだろう。 そうした情報をいかに早くキャッチして回避できるかは、社員ひとりひとりへの教育と意識改革にかかっている。2025年は倒産や反社会勢力をいかに回避するかという企業の課題がより大きくなり、社員への啓蒙が重要な年となるだろう。
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阿部成伸