バイクのBMW「M」リッター210馬力超マシンを雨のサーキットで転がしてみた【M1000XR、M1000RR、M1000R冷や汗試乗】
【M1000RR】ピュアなトラック性能が雨の中では悩ましいが、妙に安定感がある
XRに次いでの試乗となったのが、Mの真打ちとも言えるスーパースポーツM1000RRだ。最高速度が314km/h(!)という斯界のモンスターマシンは、昨今のスーパーバイク世界選手権でドゥカティのパニガーレV4Rと並んで二強を形成するポテンシャルの持ち主だ。 またがった印象で、意外と手強さを感じないのはXRよりも足着きがよく(身長173cmでは足裏が1/3ほど浮く)、車体もコンパクトで軽い車重の恩恵だろう。左右のクリップオンハンドルの下で羽根を広げるカーボン製ウイングレッドが厳ついが、別に邪魔になるわけじゃない。しかし、転倒すると間違いなくグシャッとなる部分だろう(冷や汗)。 またその効果は100km/h程度から実感でき、200km/hでは約12kg、300km/hで最大22.6kgだという。何のことかと言えば、マシンを路面に押し付けるダウンフォースのことで、これがコーナリング時はフロントまわりのグリップを濃密にし、直線ではブレない直進安定性に貢献するのだ。……とはいえ、せいぜい出して160km/hという雨の下では「効いているのかも」という弱い実感しかない。 ただし意外だったのは、最も雨に向かないタイヤを履いていたにもかかわらず、接地感が希薄過ぎて怖いという印象がそんなになかったこと。車体のホールド感がしっかりしていること、前後荷重が適正に配分されていること、制動やトラクションがきっちりと電子制御されているのだろう。悪条件下でもM1000RRは無駄に牙をむかず、フレキシブルに走ってくれたのだった。
【M1000R】軽快さが魅力のネイキッドだが、その分、環境に左右されやすい!?
一番気軽に乗れそうなモデルという印象が強いのが、ネイキッドのM1000Rだ。コースにも何とか慣れ、最後の試乗となったこのストリートファイターなら、軽快でどんなシチュエーションでもそこそこ走れるだろうと、気楽な先入観で走り出したものの……。 想像どおりに、ハンドリングは3車中で最も軽快な印象だったが、それがウエットなサーキットに合わないのか、コーナーでグリップが抜けるような不安がある。キャスター角はRRとほぼ同等だが、トレールはRRより短く、アップライトな乗車姿勢が影響して前荷重のかかりが少ないためか、前輪側からインフォメーションが希薄な印象。 本来軽快さが生きるハンドリングのM1000Rは、エクストリーム的なアクションを含め、車体を自在に操れて面白いのかもしれないが、グリップ力の薄い路面が相手ではイケないのかも。 とはいえ、場所やコンディションが変われば当然評価が変わる。そして、Mシリーズを雨のサーキットで走らせても、まったくもって取るに足らない評価しかできないが、M=手強い、恐ろしい性能といった先入観を薄めてくれるほどの柔軟さを持っていたのは間違いない。 生憎にも、BMWの2輪版Mの真価を味わう貴重な機会は、乗り手にM(マゾ)な気分を体感させはしたものの……。