バイクのBMW「M」リッター210馬力超マシンを雨のサーキットで転がしてみた【M1000XR、M1000RR、M1000R冷や汗試乗】
【M1000XR】Mへのイメージは、畏怖から意外なる包容力に変わった
まずはクロスオーバーツアラーのM1000XR。雨天走行では緊張度が低くて済むモデルが最初に回ってきてひと安心。最もツーリング志向なキャラクターであり、第3のMとして直近に発売された注目モデルだ。長距離ツーリングにも適してアドベンチャー的なフォルムをまとった同車は、車格も他のMに対してひとまわり大きい。 またがって最初に感じたのは、意外なシートの高さだ(数値上もM系の中で最も高い850mm)。身長173cmの体格では両足接地で足裏の半分以上が浮き、シート面は横幅も広め。またがったままでサイドスタンドを払うにはけっこう無理して足を伸ばす感じなのがちょっと惜しい。だが、座ってしまえばリラックスしたツアラーの乗車姿勢で、座面が広めのシートもツーリングで具合がいいだろうと想像できる。 走り出しても、適度な車重(223kg、RRは191.8kg、Rは199kg)と長めのホイールベース(1548mm、RRとRは1455mm)、3車の中では最も寝たキャスター(25.1度、RRは23.8度、Rは24.2度)と長めのトレール(117.4mm、RRは101.4mm、Rは97.6mm)で、シビアすぎないハンドリングは全天候に対応!? 想像どおり融通が効きやすい。 惜しむらくは前述したタイヤであり、どんな状況でも安定して走らせられる印象のXRだから、よりツーリング指向のタイヤを履かせれば鬼に金棒。研ぎ澄まされたパワーと足回りであっても、走りがスポイルされることはないだろう。 モデルのキャラクターに配慮しセッティングされた並列4気筒エンジンは、XRでは他のMモデルより若干抑えられ、最高出力201psを1万2750rpmで発生(RRは212ps/1万4500rpm、Rは210ps/1万3750rpm)。ただし、これほどハイレベルなスペックになると、常用域では(ましてや雨の中ではなおさら)その差など分からない。 把握できたのは、50~60km/hといったこのモデルにとっての低速域でもぐずることなく流せることと、そこからストレートに向けて150km/h程度まで加速していくときの滑らかさ。 こうしたところは、排気量に余裕のある並列4気筒のスムーズなパワーデリバリの利点だ。加えて、こんな状況下でもXRがいい仕事をしているのはライディングモードの賜物で、レイン、ロード、ダイナミック、レースの各モードに加えて、エンジンのドラッグトルク(エンジンブレーキによるホイールロック)を3段階で調整可能なレースプロ1~3のモードまで装備。 試乗中はほぼレインとロードのモードしか使っていないが、走行状態に合わせて適正に動く昨今の電子制御サスペンション技術やトラクションコントロールにも、多分に雨天走行を助けてもらっていたのだろう。