伸びる雑穀 食卓への登場回数10年で5割増 健康志向に加え味も評価
市場規模は450億円に
消費者の健康志向の高まりから、雑穀に注目が集まっている。スーパーの米売り場の隣には白米に混ぜて炊く雑穀商品が並び、家庭の食卓でも雑穀ご飯が出る頻度が10年で1・5倍になったとの調査結果もある。国産雑穀の需要は大きく、メーカーは契約栽培を強化。北海道が主産地に台頭する新たな動きもある。 【写真で見る】もち麦などの商品例 日本雑穀協会の雑穀の定義は「主食以外に日本人が利用する穀物」で、アワ、キビ、ヒエに加えて、玄米や有色米、大麦、ハトムギ、ゴマ、キヌア、アマランサスなども含む。同協会は、ご飯に混ぜる「ミックス雑穀」や、製菓・製パン原料など、家庭用・業務用いずれも伸びているとし、「年間市場規模は450億~460億円」(同協会理事で事務局長の中西学氏)と見込む。ソバも雑穀だが、ソバ粉利用は含めていない。 民間調査会社のインテージの家庭調査では、食卓(2人以上家族)に雑穀ご飯が上る頻度は増えており、13年度に比べて1・5~1・6倍ほどで推移している。白米の頻度は減っているが、雑穀は「健康志向の高まりから伸びた後、高止まりの状況」という。特に50代以上の年齢層で雑穀ご飯の割合が高い。
健康志向においしさも
雑穀大手・はくばくは、直近は精麦の伸びが目立つと指摘。4~7月期の精麦の販売高は前年同期比で15%増、そのうち、もち性大麦は同12%伸びた。「健康面に加えて、おいしさも注目されるようになった」(同社市場戦略部)。大手コンビニ各社がもち麦入りのおにぎり商品を展開し、消費者が手にしやすい環境にあることも追い風になっている。 飲食チェーン「大戸屋ごはん処」を展開する大戸屋によると、定食メニューを頼む人の約6割が、白米ご飯を、国産もち麦などを含む五穀ご飯に変えているという。新規参入の動きもあり、森永製菓は2月、ミックス雑穀と精麦の2商品を発売。いずれも国産原料で「おいしい、食べやすいと好評」と話す。 国産雑穀の需要の高まりから作付けが伸びているのが北海道だ。国や道による公的な統計はないが「既に主産地の岩手県を上回っているのではないか」(中西氏)との指摘もある。 ソバの作付面積が市町村別で最多の幌加内町は、独自に他の雑穀も集計しており、今年はアワ36ヘクタール、キビ(イナキビ)36ヘクタール、ヒエ5ヘクタール、アマランサス8ヘクタールなど。近年は計80ヘクタールほどで推移する。「ソバ畑の一部で作る農家が多い。契約栽培のため安定している」(町産業課)。同協会によると道内の他地域でも、メーカーが安定調達を求めて契約栽培をする例が増えているという。 (古田島知則)
日本農業新聞