経済界も固唾をのんで見守る自民党総裁選…「3強」激戦に思わぬ悩みも?
27日に事実上の次の首相である自民党の新総裁が決まる。投票日直前まで、誰が勝利するのかが見えない異例の展開となっている選挙戦だが、経済界も固唾をのんで見守っている。
■直前になっても見えない選挙戦…経済界もやきもき
これまでは、投票日までには誰が新総裁になるか、おおむね見通しが固まっていることも多かった自民党総裁選。ただ今回は石破元幹事長、高市経済安保担当相、小泉元環境相の3人が、大接戦を繰り広げている。 このデッドヒートが、経済界の「準備」にも微妙な影響を与えていた。たとえば、経済団体が新総裁選出を受けて出すコメントひとつとっても、3人が競る展開となっては、事前に決め打ちして準備するわけにもいかない。誰が総裁になってもすみやかに対応できるよう、コメントを複数パターン用意している経済団体もあるという。 こぼれ話ではあるが、誰が総理総裁になるかによって、政権の経済政策のスタンス、それをうけた企業の行動も大きく変わってくる。誰が総理総裁になるかが読めない状況に、ある大手企業の関係者も「もう待つしかない」と苦笑いする状況だ。ただ経済界では全体的に、デフレからの脱却が実現しつつある中、「岸田政権の経済政策の方向性を引き継いで、着実に経済回復を進めて欲しい」という声が強い。ある財界関係者は、「誰が総理総裁になっても、エネルギー問題や社会保障問題への対応など、求めることは変わらない」と話す。
■緊張感高まる金融業界…「高市首相」なら日銀は苦難の道?
こうした中、総裁選の行方に緊張感が高まっているのが金融業界だ。財政・金融政策をめぐっては、主要3候補のうち、石破氏は財政規律の重要性を訴え、金融所得課税の強化についても検討する姿勢を見せている。一方、高市氏は積極的な財政出動を訴え、財政の健全性と両立できると主張。消費をさらに増やしていくために、日本銀行の追加利上げに否定的な考え方も示している。これは「金利のある世界」で収益を増やしていきたい金融機関とは異なる方向性だ。誰が総理総裁になるかによって振れ幅が大きいだけに、ある金融機関の関係者は「石破氏と高市氏はどちらも両極端だ。そう考えると、3人の中では小泉氏がまだ良いのかもしれない」とこぼす。 さらに固唾をのんで情勢を見守っているのが日本銀行だ。3月にマイナス金利を解除、7月に追加利上げを行うなど、大規模金融緩和からの正常化を目指す植田日銀。利上げに否定的な高市氏が総裁選中に勢いを増す中、日銀内からは「厳しい」「今後の政策運営にも影響しかねない」などの声が上がり、警戒感が高まっている。
■総裁選の結果をうけ、株価と為替はどうなる?
財政・金融政策をめぐってスタンスの異なる石破氏、高市氏、小泉氏。それぞれが勝利した場合、株価や為替がどう動くかも注目だ。複数の市場関係者の見方を総合すると、財政規律を重視する石破氏が勝利した場合、市場では「円高・株安」を警戒する声が多い。一方、財政出動に積極的で、低金利が望ましいと訴える高市氏が勝利した場合、市場はまずは「円安・株高」の方向に反応するという見方も広がっている。 経済界にもさまざまな影響を与える総裁選。賃金と物価がともに緩やかに上昇する「好循環」が生まれつつある中、次の総理となる新総裁は、経済回復を確実なものにできるのか。就任早々、正念場を迎える。