日本人妻の「K-POP推し活」でできた多額の借金に悩まされ…韓国人夫が抱える「母国への苦い思い」
母国へのトラウマはますます深まって…
不幸中の幸いだったのは、そのさなかに妻が勤務先で正社員に昇格したことだった。推し活で正常な判断能力を失いながらも、一方では正社員になるほどの社会性と能力を発揮するイさんの妻。バランス感覚が優れているのか、壊れているのか……。 「借金は総額としては数百万円くらいにはなっていたと思います。最終的に彼女は債務整理をする羽目になりました」 現在、イさんは返済を行っていないが貯金がすっかりなくなってしまい、「お金を貯めて日本の大学院に入る」という長年の夢が遠のいてしまった。 K-POPに罪はなく、借金をするほどハマった妻に非があることは明らかだ。だがこの一件でイさんの母国へのトラウマはますます深まってしまった。 「私は、韓国社会の閉塞感に耐えられず、新天地を求めて日本に来ました。しかし、こんな形で『韓国』にまた苦しまされるとは……。どこに行っても、私を助けてくれる存在などないことがわかりました」 そう言って肩を落とすイさん。唯一、信仰している神田明神に祈りを捧げることで心の平安を保つ毎日だという。 過去、何かに執心するということがなかったという妻が、なぜK-POPにそれほどまでにのめり込んだのか。 「そこは私にもわかりません。韓流にハマって人生が変わったなどと言い出す人は珍しくないので」とイさんは吐き捨てる。 彼の体験は不運としか言いようがないが、これも、韓国の影響力が世界的に強まっていることの証左なのかもしれない。
安宿 緑(編集者、日韓翻訳者、ライター)