森永卓郎が経験した相続地獄と最大の失態とは? 期限の10ヶ月ではとても間に合わない遺産相続の信じ難い壁
遺産相続の信じがたい壁
父は戦争中には東京の文京区に戸籍を置いていたが、文京区の役所が空襲で焼け、その時に焼けてしまった戸籍は残っていないという壁にもぶつかった。 文京区時代の戸籍は存在しないのだから取り寄せようもない。 そこで文京区の戸籍が欠けたまま金融機関へ書類を持ち込んだところ、「文京区の役所が焼けて戸籍がないという証明書を提出してください」と言われた。 ところが役所に戸籍謄本焼失証明の書式はないという。 そこで幾度も足を運び、どうしたらよいものかと相談しているうちに、1カ月近くたって、ようやく戸籍謄本焼失証明に準ずる書類を発行してくれた。 結局のところ、父は頻繁に本籍を移していたこともあり、生まれてから死ぬまでのすべての戸籍謄本を揃えるという作業だけで3カ月以上の期間を要した。 戸籍謄本問題を乗り越え、ようやく父の持つすべての口座を把握できたと思ったのは、父の死から6カ月後だ。 東日本大震災のあとメディアは一斉に自粛した。 それに伴い私の仕事も次々にキャンセルになっていた時期だったので、何とかやり遂げることができたが、通常だったら、10カ月という申告期限に間に合わなかっただろう。 写真/shutterstock
---------- 森永卓郎(もりなが たくろう) 1957年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業。経済企画庁総合計画局、三井情報開発(株)総合研究所、(株)UFJ総合研究所を経て、獨協大学経済学部教授。専門は労働経済学と計量経済学。堅苦しい経済学をわかりやすい語り口で説くことに定評があり、執筆活動のほかにテレビ・ラジオでも活躍中。2023年12月、ステージ4のがん告知を受ける。 ----------
森永卓郎