桂南光「天命」と言われた72歳になり、噛みしめる師匠・桂枝雀さんへの思い。今一度話せるなら伝えたい言葉とは
12月8日に72歳の誕生日を迎えた落語家の桂南光さん。1970年、桂枝雀さん(当時は桂小米)に弟子入りし、数多くのテレビ番組でも司会を務めるなど幅広く活動してきました。99年に枝雀さんが59歳で逝去し、師匠の年齢を一回り以上越えて去来する思い。そして、もう一度枝雀さんと話せるとしたら伝えたい言葉とは。 (取材・文・撮影◎中西正男) 【写真】枝雀師匠の思い出を語る南光さん * * * * * * * ◆天命は「72歳」 32歳の時にね、知り合いから霊能者の方を紹介されたんです。その人から言われたのが「あなたの天命は72歳です」という言葉でした。 知り合いの方から紹介された方ですし、信じないわけでもなかったんですけど、何といっても40年も先のことですからね。信じる、信じないの前に「まだまだ先の話やから…」とは思いつつ、頭のどこかに「72」という歳への意識があるにはありました。 今年、実際にその歳になったわけですけど、なったらなったで「もう、その歳か」という気持ちにはなったものの「ここで人生を終えるかもしれないから、この1年で何かをやろう」みたいな感覚にならなかったんです。 そこで感じたのが、この72年、本当に好きに生きてきたんやなということでした。 自分のやりたいこと。自分の思っていることに正直に生きてきた。だから「天命」と言われた歳になっても、幸い「アレをしておいたらよかった…」がないというかね。
◆師匠のことが好きで入った落語の世界 考えて見たら、弟子入りしたのも落語がやりたかったのではなく、とにかく師匠のことが人間的に好きやったから。落語なんてきちんと聞いたこともなかったんですけど、師匠のことを見て「この人は絶対にエエ人や」と確信して弟子入りしたんです。そら、まぁ、ムチャクチャな流れですけど(笑)、それが全ての始まりでした。 よく言うてるんですけど、師匠が大工さんやったら、僕は大工になってました。たまたま落語家をされてたんで、自分も落語家になった。それだけのことなんです。 ほんでね、入門したら、想像していた以上にエエ人でした。とにかくやさしい。弟子と言うよりも、友だちみたいな関係性というか。逆に、悩み事を相談されることもありましたしね。それに対して、僕も「それは考えすぎやと思います」みたいなことを返して(笑)。「よう言うなぁ…」という話なんですけど、ホンマにそんな感じやったんです。 師匠のどこに惚れて弟子入りしたんですか?みたいなことを聞かれることも多々ありましたけど、これがね、言葉にはしにくい領域なんですよ。変な話ですけど、師匠がおまんじゅうを一口かじって「これ、美味しいから食べてみなさい」と渡されても、それを何の抵抗もなく食べられる。 そんなもん、他のオッサンやったら絶対に食べませんよ(笑)。でも、師匠のなら食べる。何なんでしょうね、適当な言葉が見つかりませんし、言葉にした瞬間、また味が変わってしまうのかもしれませんけど、前世から身内というか…。そんなつながりを感じる人でした。
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