多様化する事業承継にアセットファイナンスまで取り組む ~ 日本エクイティバンク・西尾公伸社長 単独インタビュー ~
―このサービスによって経営者の「説得」がしやすくなるのか
「説得」より「会話・対話」だ。家族が経営者に「事業をやめてくれ」とはなかなか言えず、引退や事業承継の話がタブーとなるケースがある。 事業承継により、配偶者が事業を立て直すといったケース、事業とともに不動産を売却し、老後を豊かに送るといった美談が語られるケースがあるが、現実にそのような話は多くない。 しかし、承継保証サービス「GRIT」で出口を用意することによって、家族からは事業の継続を応援できますといった声が聞かれた。軋轢が生じていた家庭内にあたたかい風が吹いた。 M&A仲介会社が手がけないような小規模・零細企業にもこのサービスは扱ってもらえると思う。現在は、運送系や金融系、ガソリンスタンドといった業種に利用してもらっている。 なお、相談時に債務超過の状態にある企業などは断らざるをえないだろう。弁護士として破産した方が良いと助言することとなるため、こういう案件は扱わないようにしている。
―ほかに手がけるサービスは
承継保証サービス「GRIT」のほかに2つある。将来的に事業承継、M&Aを検討する企業を対象とする交流プロジェクトPreMIサービス「TRYS」。もう1つは、エクイティ・ファイナンスサービス「OWNERS」だ。「OWNERS」は、承継保証サービス「GRIT」よりも踏み込んだサービスだ。当社は経営者から株式を有償で譲り受け後、譲渡代金を支払う。経営者には議決権を有したうえで、会社の経営を担ってもらう。費用はオーナー経営者が管理料を支払う。不動産のリースバックをイメージしてほしい。引退や廃業を検討した際、またはモニタリングする財務が著しく悪化した場合には、当社が会社を承継、清算する仕組みを整えた。
―モニタリング先が増えると専属の担当者が必要になるのでは
該当企業の価値が毀損していないかを買い手がモニタリングするため、当社で従業員を増員する必要はない。また、買い手企業の意向が変化することもある。そのため、当社が間に入ることによって、そのリスクをコントロールすることができる。 また、仮に「OWNERS」を設定した企業の経営状況が悪化した際には、法的手続きも視野に入れていく。こちらは弁護士事務所で対応したい。