ブッダの言葉が悩みに答えてくれるAIを開発「ちょっとだけ視点を変えるきっかけになってくれたら」
月が変わり、季節が変わり、総理大臣も変わる10月のはじめ。心が落ち着かない時、信頼する人や尊敬する人、あるいは有名な人のちょっとした「言葉」が、心のよりどころになることがあります。 ブッダの言葉でアドバイスしてくれる「AI」を開発したお坊さんがいらっしゃいます。それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
埼玉・秩父の34のお寺は、「秩父札所」と呼ばれ、札所めぐりをされる方もいます。この秩父札所11番「常楽寺」のホームページに今年、こんな言葉が書かれたバナーが出来ました。 『おしゃか様は言いました』 これをクリック、またはタップすると、生成AI「チャットGPT」が立ち上がり、悩みを入力すると、ブッダの言葉でアドバイスをしてくれるのです。 開発したのは、常楽寺の柴原幸保住職、65歳。柴原さんは、同じ秩父札所の13番・慈眼寺に生まれました。 先々代の住職だったお祖父さまは、大正時代の終わりに秩父で初めての幼稚園を開園。先代のお父様は、昭和の頃、障害者の支援施設を開設するなど、柴原さんのお家は、秩父における福祉の先駆けを担ってきました。 柴原さんご自身は、埼玉県内の公立男子高に進学。上下関係の厳しい体育会系の部活動で、心身共に鍛えられます。その後、仏教系の大学と厳しい修行を経て、お父様からお寺を受け継ぎます。平成の初めには、20代にして、併設された幼稚園の経営も任されることになりました。 柴原さんは、幼稚園の経営に携わって唖然とします。園から毎年およそ30人、ほぼ1クラスずつ、子供が減っていたんです。危機感を憶えた柴原さんは、男子校の運動部同様、厳しく職員にハッパをかけます。しかし、柴原さんの厳しさに、多くの女性の職員の方は、次々と辞めてしまいました。 自分が良かれと取り組んだ幼稚園の「改革」が、職員の賛同を得られなかったことに、柴原さん自身も心が折れそうになります。そんな折、お父様もがんが判明して、あっという間にこの世を去ってしまいました。柴原さんは、受け継いだ幼稚園や施設の経営に頭を抱えてしまいました。 幼稚園の運営に行き詰まった柴原さんは、ありとあらゆる本を読み漁りました。ビジネス書はもちろん、ときには経営者が参加するセミナーにも足を運びました。一方、寺の住職として、仏教の経典も改めて読んでみました。そのなかで、ブッダの言葉を集めた経典・ダンマパダの一節が目に留まります。 『他人のしなかったことを見るな、自分のしなかったことを見よ』 人間は、あまり上手くいっていない時ほど、ほかの人の悪いところを探してしまいます。何か事があれば、ほかの人のせいにしてしまっていた自分にハッと気づきました。 『もっと、もっと、自分のことを見よう』