開通から50年超 首都高の老朽化はどれくらい危ういのか?
「(五輪という)大きな目標があるわけですから、2020年という形でやりたい」 東京都知事選で初当選した舛添要一氏は都庁でおこなった就任会見で老朽化が進む首都高速道路の改修についてこう発言しました。1964年に開催された東京オリンピックと同時期に整備された首都高速1号線など、高度成長期以降に集中的に整備されたインフラが50年という寿命を迎えつつあります。首都高の老朽化はどのような状況にあり、どのように維持・管理されているのでしょうか。 【動画】舛添都知事の就任会見での発言
64年の東京五輪に向けて整備
首都高の整備は首都高速道路株式会社がおこなっています。同社では五輪開催が決まると、「2020東京オリンピック・パラリンピック首都高推進本部」(略称:首都高五輪推進本部)を社内に設置しました。 首都高は東京五輪開催によって産声をあげたといってもいいくらい、深い関係があります。1959年に首都高速道路公団法が施行され、1号線から8 号線の計約71キロメートルの基本計画が策定されました。翌年には東京オリンピック開催のために緊急的に整備を急ぐ区間が決定され、1964年の東京オリンピックまでの5年で4路線計約33キロメートルが開通したのです。 いまでは総延長301.3キロメートルとなり、当時の約10倍の長さにまで延長されました。しかも、高架部分が約79%を占め、高架橋を含めたトンネルや地下道といった維持管理が必要な道路が全体の約95%を占めているという極めて特殊な高速道路が首都高なのです。 この路線を通行する車両は一日平均で91万501台(首都高速道路通行台数等データ平成26年1月より)。しかも過積載車両の通行や慢性的な渋滞などの問題もあり、常に過大なストレスを抱えながら運用されているのが首都高の現状といっていいでしょう。
当面は安全だが「補修費は飛躍的に増大」
このため、日常的な整備は欠かせません。同社は「首都高速道路構造物の大規模更新のあり方に関する調査研究委員会」を立ち上げ、2012年から提言、報告書を発表しています。提言では首都高速道路の現状と課題として次のように指摘しています。 「過酷な使用状況による損傷は年々増加する一方で、高架橋約240キロメートル、約1万2000径間のうち、これまでに補修を必要とする構造的損傷が発見された径間は約3500 径間(約30%)である。そのうち、疲労き裂が発生した鋼桁は約2400径間、鋼床版は約500 径間、RC 床版及びPC・RC 桁のひび割れは、約1300径間である。これは過酷な使用状況にあることと、特に鋼部材では、平成14 年まで疲労を考慮した設計をしていないことに起因しているものと考えられる。首都高速道路構造物は、現在実施している補修により当面の安全性は確保できるものの、長期にわたって健全に保つための補修費用は将来、飛躍的に増大していくことが予想される」