「人手が全然足りない」この国は大丈夫なのか…意外と知らない「人口激減でこれから起きること」
人手が足りない!個人と企業はどう生きるか。人口減少経済は一体どこへ向かうのか。 なぜ給料は上がり始めたのか、経済低迷の意外な主因、人件費高騰がインフレを引き起こす、人手不足の最先端をゆく地方の実態、年間労働時間200時間減のワケ、医療・介護が最大の産業になる日、労働参加率は主要国で最高水準に、「失われた30年」からの大転換…… 【写真】日本には人が全然足りない…データが示す衝撃の実態 10万部突破ベストセラー『ほんとうの定年後』著者がデータと取材で明らかにする、先が見えない今こそ知りたい「10の大変化」と「8つの未来予測」――。 発売即5刷が決まった話題書『ほんとうの日本経済 データが示す「これから起こること」』では、豊富なデータと取材から激変する日本経済の「大変化」と「未来」を読み解く――。
人口減少で経済に何が起きるか
〈近年において、日本経済の構造が変わり始めているのはなぜだろうか。これには日本の人口が減少局面に入ったことが関連していると考えられる。 これまで世界の人口が長期的に増加を続けていた事実からもわかるように、近代の世界経済を振り返れば、経済というものは基本的には人口が増加している状態のもとでそれと並行して成長をしていくものだという暗黙の前提があったといえる。 しかし、日本の人口はいままさに調整局面から減少局面へと移行しつつある。そうであれば、人口減少とともに歩むこれからの日本経済の構造はこれまでのそれとは異なるものになる可能性が高い。 近代で日本のような大きな経済規模を有する国において、人口が持続的に減少した事例はほかに類を見ない。そう考えれば、人口減少が経済にどのような構造変化を及ぼすのかということは、これまで必ずしも自明ではなかったと考えられる。〉(『ほんとうの日本経済』) 〈データを分析していくと、足元の労働市場では人手不足の深刻化や賃金上昇の動きが広がっていることがわかる。さらに、それは2010年代半ば頃から顕在化していることがわかる。 これには日本銀行による大規模金融緩和や政府の財政出動が影響している可能性が高い。しかし、それだけではないだろう。現在の経済の変化について、一時的な政策効果と構造的な変化とを峻別することは難しいが、その根本には人口減少や高齢化といった人口動態の変化があるはずだ。 これまでのデフレーションの時代において、企業が最も警戒してきたのは需要不足の深刻化であった。つまり、人口減少によって国内市場が縮小すれば、将来、企業間で顧客を奪い合うことになるのではないかという懸念が企業の間にあった。 しかし、いざふたを開けてみると、多くの地域や業種で需要不足が深刻化する展開にはならなかった。そうではなく、近年判明してきたのは、人口減少と少子高齢化が引き起こす経済現象の正体は、むしろ医療・介護などを中心にサービス需要が豊富にあるにもかかわらず、それを提供する人手が足りなくなるという供給面の制約だったのである。 現状経済に起きている変化は、景気変動に伴う一過性の現象だけではなく、構造的なものである可能性が高い。そう考えれば、今後もその時々の景気循環による影響を受けながらも、日本経済の供給能力が十分に高まっていくまでのしばらくの間、現在の経済のトレンドは続いていくとみられる。 今後、少子高齢化が進む中で人手不足がさらに深刻化すれば、企業による人材獲得競争はますます活発化する。そうなれば、将来の日本経済においては、多くの人が予想する以上に、賃金が力強くかつ自律的に上昇していく局面を経験するはずだ。その後は、労働市場における激しい競争にさらされる形で企業は利益を縮小させることになり、経営の厳しい企業は市場からの退出を余儀なくされるだろう。〉(『ほんとうの日本経済』より)