日本にオランダ・インド・トルコの軍艦が3日連続で寄港…ロシア・北朝鮮の戦略的パートナー条約が世界にもたらす激震
インド海軍ステルスフリゲート「シヴァリク」
「トロンプ」が長崎港に入港した翌日の6月11日、海上自衛隊・横須賀基地にはインド海軍のステルスフリゲート「シヴァリク」が入港した。 「シヴァリク」は2010年に就役した軍艦だが、動力はインド企業がライセンス生産を行っている米国のガスタービン・エンジンとドイツ企業系のディーゼル・エンジンを組み合わせたものだ。 ロシアの3M54T (SS-N-27 Sizzler) 対艦巡航ミサイルや、同SA-N-7対空ミサイルを搭載する一方で、イスラエルのバラク-1対空ミサイルも搭載。イタリアの76ミリ砲を主砲としながら、対空機関砲には、ロシアのAK-630Mを採用している。 またマストには、ロシア製トップ・プレート対空レーダーや、イスラエル製のレーダーが林立している。 このように、各国の技術を取り入れて建造された軍艦だが、インド海軍の公式Xでは「シヴァリク」は「インド“国産”ステルス・フリゲート」と呼称されている。 「シヴァリク」は、どのような特徴がレーダーに映りにくいステルス性能につながるのだろうか? 「シヴァリク」を横から見ると、船体と艦橋がつながったのっぺりとした一枚板のような構造であることがわかる。その途中に、小型艇を出し入れする大きな穴があるが、これにも、シャッターのようなものが付けられて、閉めると船体や艦橋と一枚板のような構造となっている。 これなら、敵艦のレーダーの電波が真横以外の方向からあたっても、その電波のほとんどが、鏡で光が反射するように、敵レーダーのアンテナの方向には戻らないということなのだろう。 艦の側面を微妙に曲げて、つなげたような構造は、電波の反射について、極力、敵レーダー・アンテナに戻らないように計算した結果なのかもしれない。
ウクライナに供与される軍艦のベースとなるトルコ海軍のコルベット
「シヴァリク」の横須賀入港の翌12日に東京港・東京国際クルーズターミナルに入港したのは、トルコ海軍コルベット「クナルアダ」だった。 2019年に就役、全長99m、全幅14.4m、総排水量2400トンと軍艦としては小ぶりながら、4月9日にトルコを出港。20か国を訪問し、出港から約2か月後の6月8日に和歌山県・串本町に到着。日本・トルコ国交樹立100周年、両国が友好関係を築くきっかけとなった134年前の和歌山県沖でのエルトゥールル号遭難・救助記念事業の一環として来日した。 「クナルアダ」が属するアダ級も、艦橋や船体の左右側面が一体化したステルス性を意識したとみられる設計。閉じられた側壁シャッターからハープーン対艦ミサイルおよびATMACA対艦ミサイルの発射筒(キャニスター)が透けて見える。 上から覗くと、前部艦橋と煙突の間の側壁に挟まれた間には、対艦ミサイルをセットしたキャニスター(チューブ)が1組4本、合計2組8本並んでいるのが分かる。 側面に空いた穴には、対艦ミサイルを発射する際に開いて、排気用にする構造と見受けられた。 対艦ミサイルのうち4本は射程140km+のハープーンだが、残り4本はトルコ国産で射程220kmのATMCA対艦ミサイルとなっている。 米海軍のイージス駆逐艦並みの最高時速55kmで洋上を走りながら、これらの対艦ミサイルを発射するということになるのだろう。 また、76mm速射砲を主砲としRAM対空ミサイルも装備されている。 興味深いのは接近するドローン撃墜にも使用可能というリモコン式12.7mm機関銃2門が装備されていることだ。 ウクライナでの戦いでは兵器としてのドローンが発達し、ドローンからの防御も重要となっている。トルコ海軍のドローン対策も興味深いものがある。 いずれにせよ、立て続けに日本に軍艦を寄港させたオランダ、インド、トルコは、日本にとって米国のような明確な同盟国ではないにしても“同志国”ということになるだろう。 トルコでは、ウクライナ海軍向けにアダ級をベースとする2隻目のコルベットが建造中でゼレンスキー大統領によって今年3月「ヘトマン・イヴァン・ヴィホウシキー」と命名された。 (※ウクライナ軍ではトルコで建造された1隻目のコルベットから「ヘトマン・イヴァン・マゼーパ級」と呼ばれている) レーダーや主砲は、トルコ海軍のアダ級と同じものを装備しているが、どんなミサイルを装備するのかは明らかにされていない。 これまで見てきたように、6月10日にオランダ海軍フリゲート「トロンプ」が長崎に入港、翌11日に海上自衛隊・横須賀基地にインド海軍フリゲート「シヴァリク」、さらに12日に東京国際クルーズターミナルにトルコ海軍コルベット「クナルアダ」が相次いで入港した。 3日連続して外国軍艦いわゆる「同志国」に値する軍艦が、遠い本国からの航海を経て日本に寄港し、自衛隊や米軍との共同訓練も行った。 ミサイルや核開発など日本の周辺状況が厳しくなるなか、日本もまた、どんな能力を持つ国を同志国とし関係構築、維持を図るかは重要なことなのだろう。 【執筆:フジテレビ上席解説委員 能勢伸之】 極超音速ミサイルが揺さぶる「恐怖の均衡」 極超音速ミサイル入門
能勢伸之