「無意味」だった台湾の防衛戦略大転換か 決め手は米軍ドローン「地獄絵図」作戦 中国が侵攻を躊躇「ヤマアラシ化」が抑止力に
【ニュースの核心】 台湾海峡の緊張が高まっている。台湾の頼清徳総統が5月20日に就任した後、習近平国家主席率いる中国は台湾を包囲する大規模軍事演習を実施した。陸海空軍や核戦力を保有するロケット軍が参加し、中国軍は台湾側の海岸線から24カイリ(約44キロ)まで接近した。さらに、中国司法当局は6月末、「台湾独立派による国家分裂行為」を処罰する司法手続きの指針を施行し、国家や国民に深刻な危害を及ぼせば「死刑を適用」すると明記した。中国の異様な圧力と、台湾防衛で注目されるドローンの存在。民主主義国のリーダーである米国の介入はあるのか。ジャーナリストの長谷川幸洋氏が考察した。 【写真】米軍の自爆型ドローン「スイッチブレード」600型のイメージ 中国が台湾に侵攻したら、米軍はどう動くのか。 答えは「大量の無人潜水艦や水上艦、ドローンで迎撃し、島に迫る中国軍を撃破する」。こんなシナリオが現実味を持って語られ始めた。私は「中国が侵攻を躊躇(ちゅうちょ)する可能性は十分にある」とみる。 米国防総省は3月11日、中国の台湾侵攻を抑止するために、2024年度と25年度にかけて計10億ドル(約1600億円)を支出して、無人艦隊やドローン部隊を創設する計画を発表した。 すると、米ワシントン・ポストは6月10日、米インド太平洋軍のサミュエル・パパロ司令官とのインタビュー記事を配信し、中国軍が台湾海峡を渡って侵攻する構えを見せれば、「米軍は直ちに無人の潜水艦や水上艦、ドローンを出撃させる」と報じた。 米CNNは同19日、米国防総省の国防安全保障協力庁(DSCA)が「台湾に対する1000機以上のドローンの売却を承認した」と報じた。 ドローンなどを使った「ヘルスケイプ(地獄絵図)」と呼ばれるこの作戦は、台湾防衛の決め手になるかもしれない。というのは、米国が「無意味」と批判してきた台湾の防衛戦略を大転換させる可能性があるからだ。 どういうことか。 米国はかねて「台湾はジェット戦闘機や戦車などカネがかかる大型装備ばかりに夢中になっている。本当に必要なのは、携帯式ミサイルやドローンのような小型の武器だ」と批判してきた。 いくら戦闘機をそろえても、「滑走路や格納庫が野外にむき出しのままでは、たちまち無力化されてしまう」。戦車があっても「上陸されてしまってから戦うのでは遅すぎる」からだ。これは、その通りだろう。