日本にオランダ・インド・トルコの軍艦が3日連続で寄港…ロシア・北朝鮮の戦略的パートナー条約が世界にもたらす激震
"ミサイル防衛の眼"を持つ「トロンプ」
「トロンプ」と日米のイージス艦の違いは空を飛んでいる標的を見つけ、迎撃ミサイルを誘導する仕組み、特にレーダーが異なっていることだ。 建造当初「トロンプ」のヘリコプター格納庫の上には、戦闘機の探知なら距離220km以上という性能の「SMART-L」レーダーが搭載されていた。 現在の「トロンプ」には、同じ位置に「完全にデジタル化され、探知距離2000km」(メーカーのTHALES社HP)で「弾道ミサイルの監視、追尾が可能」(Janes Fighting Ships2023-24)とされる「SMART-L MM/Nレーダー」が搭載されている。 SMART-Lレーダー、または、SMART-L MM/Nレーダーが捕捉した標的が「トロンプ」に接近してくると、マスト上部で四方向に向いた探知距離約150kmのAPARレーダーが標的を捉え、迎撃ミサイルを誘導する。 日米イージス艦で使用される対空レーダー、SPY-1レーダーとはかなり異なるシステムであり、繰り返しになるが、日米が弾道ミサイル迎撃に使用しているSM-3迎撃ミサイルは「トロンプ」には搭載されていない。 それでも統合防空ミサイル防衛 (IAMD) 演習フォーミダブル・シールド 2023に参加した「トロンプ」の“ミサイル防衛の眼”「SMART-L MM/Nレーダー」の監視・追尾能力は、中国にとって関心事項になる。 「トロンプ」の台湾海峡通過が本当であったとすれば、通過時に、このレーダーを稼働して中国内陸部の北京や海南島の上空、衛星など2000km近い先まで覗かれていた可能性を中国側が懸念していたとしても不思議ではない。 中国軍側としては「戦闘爆撃機2機」を「オランダ海軍トロンプの周囲を数回旋回」させて「トロンプ」のSMART-L MM/Nレーダーに電波を出させ、性能の一端を掴みたかったのではないだろうか。 「トロンプ」が撮影した中国軍のJH-7戦闘爆撃機は、2004年に配備が開始されたJH-7Aなのか、それを再設計したバージョンなのかは不詳だが、いずれにせよ現在の中国軍の国産新鋭戦闘機であるJ-10 、J-11 やJ-16、J-20のシリーズよりは“枯れた技術”の軍用機であることは間違いない。 つまり、いまさら飛行特性などの性能をオランダ海軍の「トロンプ」に掌握されても痛くも痒くもない戦闘爆撃機だと思われる。 しかし「トロンプ」としては「中国の戦闘機2機がオランダ海軍HNLMSトロンプの周囲を数回旋回」したなら、レーダーや光学・赤外線センサーを起動し、その性能の一端、例えば追尾能力などを発揮せざるをえなかったのではないだろうか。 SMART-L MM/Nレーダーは、弾道ミサイルや極超音速ミサイル、巡航ミサイルなどの標的がどれくらいの「角速度」なら追尾できるのか。これは逆に中国にとっては、同レーダーの監視・追尾する能力を知る手立てとなったかもしれない。 そして、そのデータを「トロンプ」は米海軍のイージス艦に、そのままリアルタイムで送付できるのかどうか。中国にとっては、知りたいことだらけの軍艦、それが「トロンプ」だったのではないだろうか。 周辺国の様々なミサイルの脅威にさらされる日本にとっても“ミサイル防衛の眼”となり得る「トロンプ」の来航は、日本の防衛という観点からも重要なものだっただろう。